1日1食で生活する子どもに、仕送りができない。ふがいなさを感じる母の言葉
スーパーで肉や魚をカゴに入れるのをためらってしまうーー。ひとり親など生活に困窮している子育て世帯は、物価高騰によって食費を切り詰めています。NPOによるアンケートでは「1食平均110円以下」で暮らしている世帯が回答者の4割にのぼりました。給食がなくなる夏休みには、さらに厳しい生活になることが予想されます。
子どもの貧困問題に取り組む認定NPO法人「キッズドア」が2023年6月26日に記者会見を開き、「物価高騰により命の危険にさらされている親子がいます」と訴えました。
キッズドアは困窮している子育て世帯に物資・情報・就労支援をしており、2023年5月〜6月、登録世帯を対象にアンケート調査を実施。回答した1538人のうち、物価高騰によって「子どもに悪い影響が出ている」と答えた人が59%にのぼりました。
回答した人の90%が母子世帯。2023年の世帯所得の見込みは「200万円未満」と答えた人が63%を占めました。
2023年5月時点で「貯蓄がない」と答えた人が35%、「借り入れがある」と答えた人が45%おり、厳しい家計の状況がうかがえました。
1食あたり110円以下
特に気がかりなのは食事です。キッズドアは「物価高騰によって、コロナ禍よりもさらに食事の量が減り、質が悪くなっている」とみています。
家族の1カ月の食費を聞いたところ、2人家族で「2万円未満」が42%。3人家族で「3万円未満」が53%となりました。これを1食あたりに換算すると「1食110円以下」だといいます。
食費を減らすためにしていることとしては、「外食を減らした」(69%)、「おやつを減らした」(66%)、「肉・魚を減らした」(64%)、「親の食事を減らしたり抜いたりしている」(54%)、「野菜を減らした」(51%)などの回答が多くあがりました。
アンケートの自由記述や、キッズドアの担当者が登録世帯から聞き取った内容からは、親子の栄養や健康に悪影響がありそうなコメントが見られました。
- 「肉や魚はほとんど買わず、週に2、3回、食事を抜いています」
- 「お腹がすいても水を飲んでごまかしていた。1日1食のときもあった」
- 「ひとり暮らしをしながら大学に通う子どもは、アルバイトをして学費・生活費・食費にあてていますが、物価高騰で食費を削らざるを得ず、1日1食になっています」
- 「食費を抑えるために母親はほとんど食べていません。栄養不足で、会社の定期検診の結果が悪くなった」
- 「卵、肉、魚などタンパク源になる食材が高いので、買い物かごに入れるのを躊躇してしまう」
身体を壊すほど働いても
キッズドアはコロナ禍だった2021年夏にも困窮子育て世帯を対象にした調査を実施していますが、今回はその調査結果よりも、「子どもに十分な食事を与えられない」と答えた人の割合が増えていました。
キッズドア理事長の渡辺由美子さんは、「コロナが終われば......と歯を食いしばってきたひとり親家庭が、先の見えない物価高騰に直面し、立ち行かなくなっています」と説明します。
「コロナ禍のように休業や解雇で仕事がないわけではなく、ダブルワークやトリプルワークで身体を壊すまで必死に働いているのに、子どもに十分な食事を与えられない状態です。貯蓄が底をつき、借金の返済もある。ふがいなさから、うつ状態になる母親が少なくありません」
こんな母親でみっともない
「子どもに申し訳ない」「終わりのない生活に疲れました」「こんな母親でみっともない」ーー人生を悲観するコメントがここまで多く寄せられたことはないといい、「コロナ禍以降、いまが最も深刻な状態です」と渡辺さんは話します。
給食がなくなる夏休みは食費に困窮する世帯がさらに増えることから、キッズドアでは自治体レベルでの早急な実態把握と現金給付などを含めた緊急要望を政府に提出するとともに、夏休みの緊急食料支援のためのクラウドファンディングを実施しています。