一人で「長持ち」させなくてもいい。次の誰かへとつないでいくファッションのバトン

難波寛彦

2023年9月9日、東京都世田谷区の明大前駅からほど近い商店街に、セレクトリユースショップ「The Sense」がオープン。普段は手が届きづらい高価格帯のラグジュアリーブランドの商品が並びます。訪れたこの日は、筆者も実際に私物を持ち込み、初めての「買取」を体験。拡大するリユース市場を牽引する株式会社ベクトルに、ファッションを通じたSDGsの取り組みについて取材しました。

写真提供:株式会社ベクトル

過去最高の売上高を更新するなど着実に成長を続けているラグジュアリーブランド。一方、この数年の間に各ブランドで値上げが相次いだことで、一昔前の2倍ほどの価格になっているアイテムも珍しくありません。

そんなラグジュアリーブランドのリユース品を扱う、セレクトリユースショップの「The Sense」が京王線の明大前駅近くにオープン。人気映画の舞台にもなったこの街は、新宿や渋谷をはじめ、吉祥寺や下北沢など人気スポットへのアクセスに至便な場所としても知られています。

同店を運営しているのは、東京都と岡山県に本社を置き、全国にリサイクルショップなどを展開する株式会社ベクトル。同社ではこれまで、実店舗は買取拠点と位置付け、販売に関しては90%以上をウェブ中心に行ってきたといいます。ですが、今回の出店にあたり強化していきたいのは、実際に商品を手にすることができる販売だそう。

同社の代表取締役、村川智博さんは「ラグジュアリーブランドのような高価格帯のリユース品はネットでは売れづらいため、セレクトショップの要素を取り入れた店舗を展開したいと考えました。憧れのショップスタッフがいたり、コーディネートを組んでくれたりといった、接客のサービスも受けることができるリユースショップを目指したかったんです」と語ります。

実際に、筆者が所有していたラグジュアリーブランドのジーンズも、大手のフリマサイトに出品するも全く売れず…。商品タイトルの変更、写真の追加、度重なる値下げなども行いましたが、結局売ることはできませんでした。とはいえ、決して安くはない商品。捨ててしまうのも忍びなく、そのままクローゼットの奥にしまい込んだきりとなっていたのです。

この日、筆者所有のラグジュアリーブランドのジーンズの買取も体験。状態確認から真贋鑑定、査定までをベテランのスタッフが店舗で一貫して行います。
Hirohiko Namba / OTEMOTO

ラグジュアリーの民主化

出店にあたり、ジェネレーションレス(年代差)、ジェンダーレス(男女の差)、ヒエラルキーレス(貧富の差)を重視し、「ラグジュアリーの民主化」をコンセプトに掲げている同店。この印象的なキーワードは、どのようにして生まれたのでしょうか。

「この20年ほどの間に欧米のラグジュアリーブランドがアパレルにも進出し、ファッションが多様化したことでよりマーケットが成熟しました。そこで、私たちのようなリユースショップを活用することで、富裕層だけではなく一般の方もラグジュアリーブランドのアパレルを楽しむことができるようになるのではと考えたんです。特に、若年層はフリマサイトなどの普及で以前に比べリユース品に対する抵抗も少ない印象です。そうした背景もあり、The Senseでは『ラグジュアリーの民主化』をテーマに運営しています」

理想的な交差点

京王線と京王井の頭線の2路線が交差する明大前駅。京王線で新宿、京王井の頭線で渋谷や吉祥寺など、東京を代表する街に10分程度でアクセスすることができます。

「明大前駅の周辺は、『行く街』よりも『住む街』であると考えました。そうした点を踏まえ、この街に住んでいる人たちが新宿や渋谷、吉祥寺にあるセレクトショップや百貨店でお買い物をして自宅に持ち帰ってきているだろうと仮定すると、買取の需要も多くある場所だと思ったんです」

利便性の高さが魅力の明大前駅。そんな交差点としての側面を持つ街は、店頭で売買を行うリユースショップの出店場所としても理想的でした。

写真提供:株式会社ベクトル

今は自分の担当なだけ

今回、リユースショップでの買取は初めての経験となった筆者。文字通り「箪笥の肥やし」となっていた服をついに手放すことができました。体型の変化などで穿く機会は減ってしまっていましたが、次に愛用してくれる人に思いを馳せながらのお別れとなりました。

最後に、サステナブルなファッションを実現するために必要だと考えることについて同社に聞きました。

「長く使い続けるために手放し、必要な人に繋いでいく。言い換えると、持っている服は『今は自分の担当なだけ』なので、必ずしも自分一人で長持ちさせなくていいんです。私たちが扱っている服も、ここで購入した誰かが着て、その後また買い取られて売られ、また着られていく。そうした循環を生むマインドが大切ではないでしょうか」

いまさらだからこそサステナブル
特集:いまさら「だからこそ」サステナブルって?
OTEMOTO
著者
難波寛彦
大学卒業後、新卒で外資系アパレル企業に入社。2016年に入社した編集プロダクションで、ファッション誌のウェブ版の編集に携わる。2018年にハースト・デジタル・ジャパン入社し、Harper's BAZAAR Japan digital編集部在籍時には、アート・カルチャー、ダイバーシティ、サステナビリティに関する企画などを担当。2023年7月ハリズリー入社。最近の関心ごとは、学校教育、地方創生。
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