ピアノ、英語、水泳、ダンス...小学生の習い事迷路。臨床心理士「親は一度だけ提案すればいい」

永野原 梨香

こどもが小学生になると、さまざまな習い事の情報が耳に入ってきます。こども自らが興味を持ちはじめることもあれば、放課後の時間を有効に使いたいという親の事情もあります。こどもがハマるかどうかは未知数で、かかるお金もバカにならない。みんなどうやって習い事を決めているんでしょう。

ピアノの習い事
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小学生前後のこどもがいる保護者に「こどもに習い事をさせているか」「どんな習い事をさせているか」を聞いたOTEMOTOのアンケートには、文化系、体育会系、お勉強系と、さまざまな習い事が挙げられました。

ただし、送迎の時間がかかることや、親子で希望の習い事が異なるケースも多く、習い事をするかしないかのネックになっている状況も見受けられました。

「してみたい」を大事に

ひと昔前までの習い事といえば、水泳、ピアノ、野球などが一般的でした。今は自分や家庭の考え方を大事に、それぞれが興味のあることに取り組んでいるようです。


「ピアノ、英会話、スイミングを保育園からさせていて、本人の意思で継続。宿題がなく、体を動かす習い事なら増やしてOKと思っている」(30代母親 / 2年生女子 / 大阪府)

「家にいてもゲームばっかりなので、空手をしています」(30代母親 / 中学1年生男子 / 長崎県)

「2年生までは体操、バレエ、水泳、そろばん、英語学童、アトリエ教室、ピアノ。3年生からはバレエ、そろばん、英語塾、アトリエ、ピアノ」(40代母親 / 4年生女子 / 神奈川県)

「日本舞踊とラボパーティ(英語劇)。異年齢で交流できるのがよい」(40代母親 / 6年生女子 / 東京都)  

サッカー教室は本人の希望で2つ通っています」(40代母親 / 2年生男子 / 埼玉県)

少年野球チーム
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ベネッセコーポレーションが2024年2月、全国の小学生と保護者3096組を対象に実施したアンケート「小学生の習い事調査2024」によると、小学生の習い事は水泳(31%)がトップ。次いで、英会話などの語学(21%)、学校の予習・復習(20%)、ピアノ・電子オルガン(20%)、習字(12%)などが上位でした。2021年の前回調査ではトップ10にランクインしていなかったダンスが、2024年は7位に食い込みました。

ベネッセ習い事調査
出典:ベネッセコーポレーション「小学生の習い事調査2024

辞めるか続けるか

ただ、習い始めたことでも、興味が薄れたり、数が多くなってきたりしたら、取捨選択している人も多いようです。

「保育園で英語を習っていて入学後も続けている。小学校に慣れた2年生の夏休みからスイミングを開始し数年でやめ、興味が出た絵画教室をはじめる。無理をせず、本人がやりたいものを少しだけやるようにしている」(50代母親 / 6年生女子 / 神奈川県)

「興味を持ったものはやらせている。すでにやめたものはプログラミングと美術教室。今やっているものはパルクール(※走ったり跳んだりして心身を鍛える運動方法)」(40代母親 / 4年生男子 / 東京都)

「ピアノ。過去にダンスや水泳もやっていたが、本人の様子をみてピアノのみに減らした」(30代母親 / 4年生女子 / 神奈川県)

「スイミング、プログラミング、ラグビー、吹奏楽部、塾。最低限やらせたいことと、本人がやりたいことが立て込んだため、絞り込み中」(40代父親 / 3年生男子 / 東京都 )

「英会話は友達で習っている子が多く、『やってみる』というので年長から通わせたものの興味が持てず、1年生の途中から休会中。コロナ禍で保育園の習い事もすべてストップして持て余していた時期に日舞を見つけ、本人も興味を持ったので年中の1年間、習った。だが、発表会で燃え尽きたらしくスパッと辞めた。バイオリンは、ピアノのほうを続けたいという理由で卒業。本人の意思がはっきりしているため、基本的には取捨選択は本人に任せている」(40代母親 / 3年生男子/ 東京都)

1人で行ける日が待ち遠しい

低学年のこどもの習い事に、親の負担は避けられません。送迎にかかる時間や手間に加え、保護者同士の人間関係に負担を感じるという声も。

「テレワークがなかった頃は土日のみ習い事を入れていた。テレワークできるようになってからは平日もピアノ、バレエを入れている」(40代母親 / 2年生女子 / 東京都)  

「習字とテニスを続けています。ダンスなどにも興味はあるが、塾などがあり、時間が足りない状況です」(40代父親 / 5年生女子 / 東京都)

「習い事はさせたいですが、1週間働いて週末にたまった家事をこなしたいのに、送り迎えなどが必要。正直つらい!が本音です(笑)」(30代母親 / 1年生男子 / 千葉県)

「野球だけ平日に通っている。週1ではなかなか上達しないが、1日でも夫婦で分担して送迎するのが、かなりきつい。かといって、土日をつぶしてチームに入るのも考えもの。1人で習い事や塾に行けるようになる日が待ち遠しい」(50代母親 / 2年生男子 / 東京都)

「バトンを習っていますが、送迎が必要な距離。仕事から帰って、ご飯の支度をする時間は20〜30分くらいしかないし、大忙しです。コンテスト前は土日も練習になって、休みも潰れてしまいます(泣)。ママさん達との交流も難しいなぁ〜と思います。団体競技は保護者同士の付き合いなども考えないとだめなので、私にはホントは向いてないのですが…」(40代母親 / 4年生女子 / 大阪府)

「保護者にすすめられて」6割

こども向けサイト「ニフティキッズ」を運営するニフティが2024年1〜2月、1661人の小中学生を対象に実施した習い事に関する調査によると、小学生の88%が習い事を「している」と回答。習い事を始めたきっかけは、「自分でやりたくて」が69%、「おうちの人にすすめられて」が60%でした。

ニフティ習い事調査
出典:ニフティ「習い事に関するアンケート

親の希望とこどもの気持ち

アンケートからは親がこどもに身に着けてほしいことを習わせている様子や、親が習ってほしいこととこどもが習いたいことが異なっている様子もうかがえました。

「ダンス、公文、水泳。水泳は泳げるようになったら、いつでも好きなタイミングでやめていいことを伝えています」(30代母親 / 2年生女子 / 東京都)             

「こどもが男の子3人のため乱暴な子にならないよう、4歳からピアノを習わせています。妻がこれまで見てきた生徒でピアノを習っている男の子は、素直で優しい子が多かったとのことです」(30代父親 / 1年生男子 / 神奈川県)

「小学校の屋上で開催しているフラッグフットボールに通っています。本人が行きたいと言ったからです。水泳をすすめていますが、嫌だと言って聞いてくれません」(30代母親 / 2年生男子 / 東京都)

「4歳からピアノをさせています。1年生になったら水泳やダンスなど体を動かす習い事をさせたいと思っているが、いまいち、本人にやる気がないので無理にさせるわけにはいかないし…と悩んでいます」(40代母親 / 1年生女子 / 千葉県)

「これまでピアノ、塾、テニスをしてきた。3年生では体操、英語、そろばん、ダンス。短期講習での水泳やサマースクールでの英語もしている。先生の引退で辞めてしまったピアノを、もう一度させたい。進学塾、絵画、茶道、華道などの伝統文化を習わせたい」(40代母親 / 4年生女子 / 奈良県)

一方で、こどもがしたいことだけを習わせる、という声もありました。

まだ自分のやりたいことが見つかっていないようなので、やらせていません。『どうしても、これがやりたい!』というものが見つかったらやらせようと思っています」(40代母親 / 1年生男女双子 / 東京都)

「オンラインのプログラミング講座だけは、したいと言ったのでさせている。学校以外の時間はこどものものなので、親が決めて行かせるのは違うと思う」(40代母親 / 2年生男子 / 長崎県)

親は一度だけ提案を

ベネッセの「小学生の習い事調査2024」によると、小学生が新たにしてみたい習い事のトップは、プログラミング(8%)。続いて、ダンス(7%)、動画制作(5%)、ピアノ・電子オルガン(5%)でした。保護者が新たにさせたい習い事のトップは「英会話などの語学」(10%)。続いて、「水泳」(7%)、プログラミング(5%)、学校の予習・復習(5%)でした。ここでも、親とこどもの希望はほとんど合致していません。

出典:ベネッセコーポレーション「小学生の習い事調査2024
出典:ベネッセコーポレーション「小学生の習い事調査2024

これまで5000件を超える子育ての相談を受けてきた医師・臨床心理士の田中茂樹さんはこう話します。

「こどもの選択を尊重しようと声をかけても、なかなか決められない子もいます。『どうしたい?』と何度も聞くのは『早く決めなさい』と命令するのと同じ。『本当にやる気ある?』と何度も聞くのも、親の意見を押し付けることになります」

「親が提案するのは1回だけでいいんです。例えば、『近所に◯◯教室があるよ』などと一度だけ提案してみてください。こどもはちゃんと覚えていて、興味を持ったら必ず相談してくるでしょう」

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※ ネウボラ = フィンランド語で「アドバイスの場」という意味。妊娠期から子育て期まで切れ目のないサポートを提供する自治体が日本でも増えています
アンケートは引き続き募集中です
OTEMOTO

親子サポートプロジェクト「6歳からのneuvola」では、家庭学習のほか、保護者の働き方、PTA、おこづかい、ゲーム、勉強場所などのテーマを順次、取り上げています。アンケートは引き続き募集していますので、ご意見やご経験をお寄せください。

また、課題解決をともに考え、親子をサポートする企業や団体を募集しています。詳しくはこちら(contact@o-temoto.com)からお問い合わせください。

著者
永野原 梨香
週刊誌で主に経済記事を担当。現在、フリーライター。関心ごとは暮らしに沿った経済の動き、SDGs、各国の文化や食。
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