PTA役員決めじゃんけんで保護者会が凍りつく。活動する意義、加入しない不利益は?

小林明子

新学期は、学校生活で心配なことが増えたり、さまざまな家庭の子育てに触れる機会が訪れたりする時期。小学生の子育てには、乳幼児期とはまた違った悩みが生まれます。OTEMOTOでは、親子サポートプロジェクト「6歳からのneuvola(ネウボラ)」をスタート。こどもが小学1年生になる保護者が悩みがちなテーマについて、"先輩"や"同期"にあたる保護者たちのリアルな声を紹介していきます。

ひとつの正解はないけれど、みんながどう対処しているのかを知ることで、「うちの子には何が合うのか」を考えるヒントになりますように。今回は「PTA」について考えます。

※ ネウボラ = フィンランド語で「アドバイスの場」という意味。妊娠期から子育て期まで切れ目のないサポートを提供する自治体が日本でも増えています。

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アンケートは引き続き募集中です
OTEMOTO

こどもが小学校に入学して初めて知る、PTAという組織。保護者と教職員による社会教育団体で、地域と協力しながら教育環境を充実させるための活動をします。

活動内容は学校によって異なります。PTA役員(執行部)のもとに構成された各委員会で、登下校の見守り、学校行事の手伝い、広報誌の発行、バザーやベルマークの回収、学校を会場とした検定やイベント運営などの活動を分担しているのが一般的です。

通学路
写真はイメージです
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PTAは任意団体であり、入退会が自由であることが最近は知られるようになってきました。

しかし学校によっては、「1人1回は必ず委員をしなければならない」などのルールがあり、負担を公平にするため、「ポイント制」「推薦」「じゃんけん」「くじ引き」など、役員や委員を選出するために苦労していることも。「欠席裁判」の可能性もあるため、4月の保護者会には「負担の大きい役員や委員になったらどうしよう」と緊張感をもって参加する保護者も少なくありません。

OTEMOTO編集部がアンケートで聞いたところ、PTAに対する不安や悩みが寄せられました。

じゃんけんで勝ち抜く

「PTAが必須の地域で、活動も半ば義務付けられています。ポイント制なので、低学年のうちに終わらせたいという思いで今年役員をやることになりましたが、今から不安です」(40代母親 / 2年生男子 / 埼玉県)

「中学受験率9割以上の学校なので、低学年のうちに役員や委員を済ませたいと考える人が多数。1年生のときにじゃんけんで勝ち抜いて、校外係という割と楽な委員を経験済みです」(40代母親 / 5年生女子 / 東京都)

「『全員でPTA活動を!』と呼びかけるプリントが配られました。会長など主な役員は推薦制で、あとの各委員はくじ引きで決めています。学童の保護者会もあるし、やらなくていいならPTAは任せたいけど、そんなわけにもいかず…」(40代母親 / 大阪府 / 4年生女子)

PTAに入らない

PTAは任意加入のため、活動が負担だったり、活動内容に賛同できなかったりする場合は、入会しないという選択をすることができます。

東京都PTA連絡協議会(都P連)が2022年9月に実施した「PTA実態調査」によると、都内の公立小学校PTA159校のうち、非加入の世帯があるのは約7割の111校でした。


PTA参加のために有給休暇を使いたくないので、加入しない予定。ただ、通う小学校のルールがまだわかりません」(30代母親 / 1年生男子 / 千葉県)

入らないことで何か弊害があったら嫌だし、入って委員をやらなきゃいけないのも面倒だし、悩みます。平日も土日も関係ない仕事なので、PTAに時間を取られるのはもったいない」(40代母親 / 1年生双子 / 東京都) 

「入っていません。加入の用紙に小さい字で『加入しない人は連絡を』とあって、連絡してPTA会長とオンライン面談のうえ、入らないことで確定しました。任意団体であることを会長がきちんと意識して運用しており、加入していない家庭でもデメリットはありません」(30代母親 / 2年生男子 / 東京都)

差別は公共性に反する

PTAはその学校に通うこどものために任意で活動する団体であるという趣旨からすると、保護者が入会していないからといってこどもに不利益が生じることは、不適切な活動にあたります。

「PTAからの入学や卒業の記念品を、PTA会費を払っていない家庭のこどもに配ってよいのか」といった問い合わせについて、全国PTA連絡協議会は「PTAが会員のこどもの利益のためだけに活動する場合、組織の公共性に反する」「差別的な対応があった場合、学校内でのこども同士のいじめや差別を助長することにもなりかねない」と説明しています。

ただ、そもそもPTAが任意加入であることが周知されていない学校も少なくありません。入学のときに加入の意思表示をする機会がなかったり、学校に納付する費用と同時にPTA会費が徴収されていたりする場合もあります。

前出の都P連の調査では、任意加入であることを説明していないPTAが20.1%、加入意思を確認していないPTAは27.7%ありました。


「自動入会になっていて、会費も学校経由の自動引き落としなので非加入の選択肢がありません。必ず1回は委員になる必要があり、できない場合は理由を記載して提出しない限り抽選の対象になります。納得できないため、理由を記載して会費以外の活動を辞退しています」(40代母親 / 3年生男子 / 東京都)

「入学時に、全員加入するものだと思って入りました。PTA主催の校内行事もあるため、娘の学校では加入していない家庭はほぼいなかったと思います。6年間のうち2回は委員になる必要があり、平日の集まりで仕事との両立は大変でしたが、PTA活動は『こどもたちのために行うもの』なので不満はありません」(30代母親 / 中1女子 / 東京都)

PTA
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LINE、Zoomで効率化

一方、ここ数年でPTA改革が加速し、共働きでも参加しやすいよう活動を見直したり、コロナ禍でオンラインツールを導入したりと、保護者の負担を減らす動きも進んでいます。


「コロナ明けでイベントが少なめでおすすめと言われたので、仕事の調整ができそうな、あらかじめ実施日と予備日が決まっている運動会の係を選びました。やりとりはLINE、集まりは参観日後の設定だったので融通はききました」(30代母親 / 2年生女子 / 大阪府)

「長女のときはコロナ前だったため土曜日に対面で集まり、平日も学校に資料を届けに行く必要があった。現在はオンラインで実施しているようです」(30代母親 / 2年生女子 / 東京都)

「長男の小学校は平日昼間に委員会があり、日程調整が大変でした。次男の小学校は委員会は最低限の回数で土曜の午前中、ミーティングはZoomでOKなど合理化が進んでいて、学校によって負担が違うのだなと驚きました。やりたい人が効率的にできるなら、とても有意義なボランティア活動だと思っています」(40代母親 / 4年生男子 / 神奈川県)

「兄弟に発達障がい児がいることを伝え、活動には一切関われないと宣言したところ理解を得られたので、加入して会費だけ払っています」(40代母親 / 4年生男子 / 東京都)

「兄のときはできる範囲で委員をやりました。娘のときもできる内容なら受けてもいい。テレワークだしなんとかやりくりできそうで、昔ほど抵抗感はありません」(40代母親 / 2年生女子 / 東京都)

「私立小なのでPTAはありません」(40代父親 / 5年生女子 / 東京都)(40代母親 / 4年生女子 / 神奈川県)

楽しくなければ意味がない

PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』などの著書があり、PTAの取材を続けているライターの大塚玲子さんは、こう話します。

「4月の保護者会での委員決めは、保護者にとってかなりのプレッシャーになっています。じゃんけんやくじ引きで、なりたくないのに委員になる可能性があると、ネガティブな受け止め方になるのは当然です。同調圧力もある旧来のPTAの仕組みを負担に感じる人も多くいます」

「義務ではない任意のPTAをなぜやるのかを考えると、結局、楽しくなければやる理由が見つかりません。任意のボランティア団体を継続するなら、保護者がこどものために楽しみながら活動できる方法を考えていく必要があります」

学校のことを知れる

OTEMOTOのアンケートには、意義のあるPTA活動にするためのとらえ方や提案も寄せられました。

「自主的に学校にかかわり、学校とこどもの姿が見られるよいチャンスでした。じゃんけんで負けたほうがなるようなネガティブなとらえ方はもったいないです」(母親  / 高校生以上 / 東京都)

「1年生のうちに参加して学校に顔を出す機会をつくり、こどもを安心させたいし、学校のことも知りたい」(40代母親 / 1年生男子 / 東京都)

「平日の集まりがある、連絡方法がアナログ、すべて校長の承認が必要、慣例だけで形骸化している業務など、30年前と変わらないPTA活動の姿と効率激悪の世界に愕然とします。今後、担当する人たちのためにも仕組みを変えたいと常に思います。ものすごく工数がかかりそうで、それなら自分のこどもや仕事に時間を費やしたいと腰が上がらないのが現実ですが...」(40代父親  / 3年生男子 / 東京都)

「事情があってできない方もいるため、役員や委員を務めてくれる人にメリットがあるといいなと思いました。例えば会費の一部から報酬を出す、優先してこどもの行事に参加できるなど」(30代母親 / 中1女子 / 東京都)

PTA役員をつとめた結果、問題を感じて一度は非会員になったというある母親は、ふたたびPTAに参加して役員となり、改革を進めています。

「今年度からは完全立候補制で、足りない委員を抽選で決めないで、いる人だけでやる方法に変更することになりました。これで成り立つのかヒヤヒヤしていますが、絶対に正しいことなので成功させたいです」(40代母親 / 6年生女子 / 東京都)

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親子サポートプロジェクト「6歳からのneuvola」では、PTAのほか、保護者の働き方、学校行事の分担、おこづかい、ゲーム、勉強場所などのテーマを順次、取り上げています。アンケートは引き続き募集していますので、ご意見やご経験をお寄せください。

また、課題解決をともに考え、親子をサポートする企業や団体を募集しています。詳しくはこちら(contact@o-temoto.com)からお問い合わせください。

著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
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