こどもが歩いていける範囲に「こども食堂」を。最新調査から、全国の公立中学校とほぼ同数となったことが明らかに
こどもたちにとっての「第3の居場所」として、重要な役割を担ってきたこども食堂。食事などを無料もしくは低額で提供し、誰もが気軽に訪れることができる場所として、現在はこどもから高齢者まで多世代の交流拠点としても機能しています。こども食堂を支援する認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえが発表した最新の調査によると、こども食堂の総数は全国の公立中学校とほぼ同数となったことがわかりました。
こども食堂は、2012年に「第1号」が登場して以降、こどもたちにとっての「第3の居場所」として重要な役割を担ってきました。食事などを無料もしくは低額で提供し、誰もが気軽に訪れることができる場所であるこども食堂。各地域の有志たちが中心となって開設され、現在はこどもから高齢者まで多世代の交流拠点としても機能しています。
そんなこども食堂を支援する、認定NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえが、最新のこども食堂全国箇所数調査結果を発表。その総数は、全国の公立中学校とほぼ同数となったことがわかりました。
2023年度の調査によると、全国のこども食堂は昨年度から1768箇所増え、合計9131箇所に。これは、全国の公立中学校と義務教育学校の数とほぼ同数で、2018年度の調査開始以降最大の増加数となったということです。
小学校区に対する充足率(校区実施率)も全国平均30.56%と、初の30%超えとなる結果に。これは、小学生の約3割には歩いて行ける範囲にこども食堂がある計算です。2025年には、全小学校区に対し1つ以上のこども食堂がある状態を目指しているむすびえ。現状は目標に達するペースで増加してはいないものの、全都道府県でその数が増加していることからは、着実に”社会のインフラ”化していることがわかります。
むすびえは、この背景にコロナ禍を通して人々の意識変容があったのではないかと推測。新型コロナウイルス感染症が2023年5月8日に「5類感染症」へ移行したことでコロナ対策が緩和され、人々が集いやすくなったことも影響しているとみています。
コロナ禍を経てのレジリエンス
さらに、2023年6⽉に実施した「第8回こども⾷堂の現状&困りごとアンケート」によると、参加者が一堂に顔を合わせて食べる会⾷形式のこども⾷堂を開催している割合は 70.6%と前年比21.8ポイント増。
このことからも、こども⾷堂を通じて地域のつながりを取り戻していこうという、人々の意識が変化したことによるレジリエンス(困難をしなやかに乗り越え回復する力)が大きな力になっていると捉えているといいます。
また、2023年4月のこども家庭庁の発足、こどもの居場所に関する指針が年内に閣議決定予定など、国や自治体、そして企業によるこどもの居場所づくりへの関心が高まっていることもその背景として考えられています。
その一方で、地域間で格差があることも浮き彫りになっています。例えば、人口が全国46位(2020年国勢調査)の67万1126人と低い水準にある島根県ですが、こども食堂の充足率は13位、人口比では5位と決して低い水準にはありません。
このことについて、しまね子ども食堂ネットーワークの中道由美子さんは「島根県は、高齢者サロンや子育てサークルなど地域活動が活発に行われている土地。そうした素地があったことも影響しているのでは」と話します。
一方、充足率、人口比ともにワーストとなった長崎県、46位となった秋田県の両県は、人口では全国で最下層にない都道府県。こうした差が出ていることについて、むすびえの湯浅誠理事長は「こども食堂を支援する、各都道府県の団体の支援力などにも差が出ているのでは」と話します。その背景には地域特有の事情などがあるため、低水準となっている要因について「人口が少ないから」とは必ずしも言えないようです。
多世代の居場所とするために
こども食堂が目指すのは、あくまで多世代の居場所づくり。このことについて、湯浅理事長は「多世代の居場所ということを強調するのなら”こども”食堂と呼ばない方がいいという意見もありますが、『こどものため』という目的があるからこそ、さまざまな世代の人が集まってきてくれるんです。逆説的ですが、こどもを中心とすることでこども食堂を多世代の居場所にできると考えています」と話します。
発足から5周年を迎え、記念事業やこども支援のためのクラウドファンディングを行っているむすびえ。こどもだけではなく、さまざまな世代の居場所としてのこども食堂の拡充を目指し、その挑戦は続きます。