夏祭りで開いていた門から3歳児が道路に......実際にあった保育園のヒヤリ・ハット
2022年9月に静岡県牧之原市の認定こども園で通園バスに置き去りにされた3歳の女の子が熱中症で死亡した事件を受け、内閣府の調査研究事業はこのほど、幼稚園や保育園での保育中に重大事故につながりかねなかった事例を「教育・保育施設等におけるヒヤリ・ハット事例集」としてまとめました。
「教育・保育施設等におけるヒヤリ・ハット事例集」は、全国のこども園や幼稚園、保育園の団体、また事例収集をしている横浜市や兵庫県など4自治体の協力のもと集まった、重大事故の一歩手前の事例100件が掲載されています。
送迎バスの降ろし忘れや乗せ間違い、公園での置き去りや見失い、散歩中の列からの離脱、降園のときの飛び出し、園からの抜け出し、トイレの閉じ込めなど、ひとつ間違うと大きな事故につながりかねなかった事例が、「こうすればよかった」という園のコメントとともに掲載されています。
OTEMOTOではこのうち、夏の行事と関係しているとみられる事例についてまとめました。
普段は閉まっていた門から
Aちゃん(3歳7カ月)はその日、慣らし保育で保育園に預けられていました。保育園では夏祭りが開かれており、1歳児から5歳児クラスまでの子どもが園庭にいました。
園庭の側門が開いていました。Aちゃんはそこから出て、道路を歩いていきました。ちょうど保育園に迎えにきた母親に見つけてもらうことができました。
この側門は普段は閉まっていましたが、この日は行事のため午後3時以降、開放されていました。門に職員は配置されていませんでした。また、活動中に人数確認をしていませんでした。
園は、Aちゃんが園外に出ることを防げなかった背景について「職員みんなで見守っているという安心感と、夏祭りの開放感があった」とコメントしています。(2020年7月、午後4時ごろ)
トイレから戻ると1人きり
Bちゃん(4歳0カ月)が登園してきたとき、いつもとは違う保育者が、4歳児クラス22人全員の連絡帳を慌ただしくチェックしていました。この日は水遊びが予定されていて、プールに入れてもよいかどうかが連絡帳に書かれていたからです。
あいにく担任がお休みで、保育補助も急きょ休みになったため、普段はあまり担当しない保育者が1人でプールの準備をしていました。プール遊びを始める時間が迫っていました。登園システムで、Bちゃんの出席は入力できていませんでした。
Bちゃんがトイレに行って出てくると、クラスには誰もいませんでした。
移動する前に園児たちを集めたときに、保育者は目視で「全員集まった」と思い込んで移動してしまっていたからです。
たまたま通りかかった園長がBちゃんに気づき、事情がわかるまで、Bちゃんがいないことに誰も気づいていませんでした。(2022年8月26日、午前10時ごろ)
壊れた船を直そうと
Cちゃん(5歳児)は保育園の水遊び中、自分でつくった船で遊んでいたところ、壊れてしまいました。ビニールテープなどで直そうと、誰にも言わずに1人で保育室に戻りました。
たまたま通りかかった保育者から声をかけられましたが、それまでCちゃんが部屋に戻ったことに誰も気づいていませんでした。
この園では担任2人が、子どもと遊ぶ担当と見守りをする担当とで役割分担をしていましたが、「どのような配置で、どのような視点で子どもを見守るかが曖昧な点があった」とコメントしています。(2020年8月19日、午前11時ごろ)
バス遠足で降ろし忘れ
この日はバス遠足でした。園に到着して、車庫の中で園児たちは降りていきましたが、Dちゃん(5歳4カ月)はひとり、バスの中に取り残されました。
保育室に戻ってから点呼をして、職員がひとり降ろし忘れたことに気づき、バスの中でDちゃんを見つけました。Dちゃんは医療機関を受診し、脱水症状などの症状はなかったということです。
遠足では通常のバスの添乗員ではなく、別の職員が乗っていました。バスの中で寝てしまった園児が数名いたことで、起こすことの対応に追われてしまっていたといいます。(2022年8月9日、正午ごろ)
重大事故に隠れる危うい事例
この事例集は実害がなかったケースが中心ですが、「1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には300件のヒヤリ・ハットが隠れていると言われています」として、事故予防に役立てるよう呼びかけています。