季節のかわりめの頭痛やだるさ。子どもも「気象病」になるの?

今井明子

どうも頭が痛い、体がだるいなど、体の不調を感じる…。それは気のせいではなく、天気のせいかもしれません。気圧や気温が変化することで起こる体調不良は「気象病」と呼ばれ、大人だけでなく子どももひそかに悩んでいる可能性があります。予防法や治療法はあるのでしょうか。

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私たちの体は、どんなに外が暑くなったり寒くなったりしても、体温は36~37℃程度で一定です。気温だけではなく、気圧に対しても同様です。富士山の上に行くと、気圧が低いのでポテトチップスの袋がパンパンに膨らみますが、私たちの体はそこまで膨らみません。

このように、人体には周囲の環境に関わらず、体内の環境を一定に保とうとする働きがあります。その働きを管理しているのが自律神経です。

しかし、気温や気圧などの変化が急だと、自律神経がその変化に追いつけません。すると、頭痛や体のだるさなどの不快な症状が出ることがあるのです。

なお、台風の接近に伴って喘息の発作が出やすいのも、気圧や気温の変化が関係していると言われています。

こうした症状について、「気象病ハンドブック」の著書があり、せたがや内科・神経内科クリニックで「気象病・天気病外来」を開設している医師、久手堅司さんに詳しく聞きました。


天気と不調の関係を記録しよう

夏から秋へと季節が変わるときは気圧が変動しやすく、小学校高学年のお子さんが朝がなかなか起きられないほどのだるさや頭痛、めまい、首・肩の凝りなどを訴えてよく受診します。

普段は気づかないレベルの不調が、気圧が下がることで症状がひどくなり、不調に気づくというケースが多いです。

ちょうどこの年頃の子どもはゲームで長時間遊んだり、中学受験の勉強で机に向かう時間が長かったりして、運動不足になりやすいです。それが原因で普段から首や肩の凝りがあると、低気圧が来たときに頭痛を訴えやすいですね。

これらの症状が気象病かどうかを判断するには、普段から子どもをよく観察し、曇りや雨の日に体調が悪そうかどうかを記録しておくことをおすすめします。特に、「頭痛―る」というアプリを使えば、気圧の変動がグラフで表示されるため、体調不良との関連がよくわかります。

ラジオ体操やストレッチも

そのうえで、もし天気と体の不調が関係ありそうなら、たとえば天気の悪い日にはラジオ体操をしたり、ストレッチをしたりするとよいでしょう。

最近では、気圧の変化に伴う体調不良には内耳が関わっていることも明らかになっているため、耳を引っ張るなどのマッサージを行ったり、耳にホットタオルをあてたりして、耳の血行をよくすることも有効です。

このようなホームケアでしばらく様子を見て、もし症状が改善せず、日常生活にも支障が出るのであれば医療機関を受診しましょう。症状に合わせた薬を処方してもらうなど、適切な治療をしてもらうようにしましょう。

気象病外来をおこなうクリニックはまだ少ないのですが、たとえば頭痛がひどくなるのであれば頭痛外来に行くなど、症状に合わせた専門のクリニックに行くとよいでしょう。

子どもが頭痛や倦怠感を訴えると、親としてはついつい「気のせいじゃないの?」「さぼりたいだけなんじゃないの?」といいたくなるかもしれません。しかし、天気が原因であることも考慮し、子どもの不調の声に耳を傾けて、症状をやわらげるようにケアしてあげたいですね。

著者
今井明子
サイエンスライター、気象予報士。得意分野は科学系(おもに医療、地球科学、生物)。「Newton」「AERA」「東洋経済オンライン」「BUSINESS INSIDER JAPAN」「暦生活」「子供の科学」などで執筆。著書に「面白いほどスッキリわかる! 世界の気候と天気のしくみ」、共著に「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」などがある。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師、気象科学館の解説員なども務める。
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