「なんだか休みたい」は、その子なりの痛み。大人にできることは。児童精神科医のメッセージ

小林明子

長期休暇が明けるタイミングには、子どもの不登校や自殺が増える傾向があります。「学校に行きたくない」「生きているのが苦しい」。そんなSOSを、大人は受けとめることができているでしょうか。児童精神科医の小澤いぶきさんがOTEMOTOに寄せたメッセージを紹介します。

小澤いぶきさん
小澤いぶき(おざわ・いぶき) / 児童精神科医 / 精神科専門医 / 認定NPO法人PIECES 代表理事 / 東京大学医学系研究科 客員研究員
精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。人の想像力により、一人一人の尊厳が尊重される寛容な世界を目指し、認定NPO法人PIECESを運営している
提供写真


子どもをみつめるメガネを

隣にいる子どもが、例えば、今いる場所を安全でないと感じていたり、今の学びの場が自分にとってはしんどいと感じていたり、理由はうまくいえないけど、なんだか休みたい、生きているのが苦しいなあと感じているとき。

その子なりのたくさんの表現をしていたり、その子なりに痛みとともに生きていて、誰にも言えないことがあるかもしれません。

どんな子どもも、いろんなサインや対処法をもっています。

私たち大人が、ちょっと立ち止まって、その子の安全に生きる権利や、学ぶ権利、意見を言う権利や、参加する権利、遊ぶ権利が守られているかを問い直し、子どもを一人の人としてみつめるメガネをかけてみると、そして、ちゃんと聴こうとしてみると、ふだん見過ごしていた声が聴こえてくるかもしれません。

子どもたちの今が安全でないとき、安全な環境と選択をつくるのは社会の責任でもあります。

子どもの身近にいる保護者だけがその責任を負うのではなく、子どもの権利をちゃんと大切にできる社会にするために。

わたしたちはなにができるかな、という問いと、子どものまなざしを知ろうとする視点をもって、尊厳ある一人の権利主体として子どもをみつめ、子どもと共にある社会と日常を育んでいきましょう。


子どもの孤立の解消に取り組む認定NPO法人PIECESは、「問い」を通じて自分や他者、世界を想像し、誰もが大切にされる社会を目指して、キャンペーン「#問いを贈ろうー 忙しい毎日に、『問い』でちょっとひとやすみー」を実施しています。詳細はこちら

休み明けに注意が必要

子どもの自殺数データ
小中高校生の自殺者は増加傾向にある
出典:厚生労働省(警察庁「自殺統計」より厚労省自殺対策推進室作成)

コロナ禍となった2020年、小中高校生の自殺者数は、499人と前年より大きく増えて過去最多に。2021年はそれに次いで473人となりました。

特に、夏休みなど長期の休み明けは、子どもが不安定になりやすい時期です。

文部科学省や厚生労働省は、18歳以下の子どもの自殺は長期休業明けに増える傾向があるとして、注意を呼びかけています。

5月のGW明けや夏休み明けに、学校に通う子どもの自殺が増える傾向がある
出典:文部科学省 児童生徒の自殺対策について

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著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
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