家賃が高めでもコスパが良いと感じる理由。話題の「賃貸ZEH(ゼッチ)」、気になる電気代は

小林明子

戸建住宅や分譲マンションに比べ、ライフステージの変化に柔軟に対応できるのが、賃貸住宅で暮らすメリットです。最近は、高級感あふれるデザインで設備や機能が充実しているワンランク上の賃貸住宅もあり、「これ本当に賃貸?」と驚くほど。積水ハウスの賃貸住宅「シャーメゾン」に入居したご夫妻が、住んで初めてわかった意外なポイントを教えてくれました。

シャーメゾンに新築で入居したイノウエさん夫妻(仮名)。入居してから家族が増えた
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

【関連記事】「もう小学生なんだから」とは言いたくないから。ほめ上手になる部屋づくり6つのポイント

「ここはホテル?」

2023年1月、神奈川県横浜市にある賃貸住宅に住む、会社員のイノウエ マサキさん(31歳、仮名)とアカリさん(31歳、仮名)夫妻を訪ねました。

この日午前、横浜の気温は約5℃。コートの前を合わせないと肌寒さを感じるほどですが、オートロックのエントランスをくぐった瞬間、ポカポカした暖かさに驚きます。

緑が配置されたエントランス。バス通りに面しており、オートロックと防犯カメラが完備されている
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

共用廊下は外気と遮断された屋内廊下。落ち着いたベージュ色のカーペットが敷かれていて温かみを感じさせるだけでなく、実際に暖房も効いています。

高級感ある石張りのエントランスは吹き抜けになっており、自然光が注いでいます。ドアやエレベーターはシックなダークブラウンで統一され、ダウンライトが各戸の玄関をやわらかく照らします。

「ここはホテル?」

思わず声をあげるほど高級感あふれるホテルのような空間は、積水ハウスの賃貸住宅「シャーメゾン」シリーズの特徴なのだそう。

吹き抜けや石張りで高級感あふれるエントランス
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

1万円高くても「コスパいい」

イノウエさん夫妻は2021年4月、妻アカリさんの転職を機に、新築だったこの賃貸住宅に入居しました。屋内共用廊下や落ち着いた内装は、夫マサキさんの希望でもありました。

「最優先したい条件は、夫婦とも職場に通いやすい立地と、猫を飼えることでした。そのうえで物件をいくつか比べ、屋内廊下で高級感があることや、防犯や耐震の面で安心感があることから、ここに決めました」(マサキさん)

入居前に直接内覧ができたのはアカリさんのみでした。もともとあまりこだわりはありませんでしたが、キッチンのコンロがIHの3口で広めだったことや、床から天井までのハイドアですっきり見えること、大通りに面しているのに窓を閉めると車の音がほとんど聞こえなかったことが気に入りました。

インスタ映えする壁が、夫婦のお気に入りの一角。天井までのハイドアで開放感のあるカフェのよう
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

45㎡の1LDKで、家賃は11万円。周辺の他の新築物件と比べると1万円ほど高めでした。それでも決めた理由は「これだけ高級感があれば、逆にコスパが良い」と考えたからでした。

その後、アカリさんは妊娠。育児休業中ほとんど自宅で過ごす生活になり、このときの決断は正解だったと、性能面で強く実感するのでした。

「外の音だけでなく、お隣や上の階の生活音もほとんど聞こえないんです。家の中に長時間いてもストレスがたまるということがありません」

シャーメゾンZEH
掃除しやすいガラストップのIHクッキングヒーターは3口で、魚焼きグリルもある
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

エアコンつけっぱなしなのに...

さらに住んでみて初めてわかったのは、外気に影響されず、室温が一定に保たれていることによる快適さだそうです。

イノウエさんの家族には、5カ月になる長男とペットの猫がいます。フローリングの冷たさを感じないので、寝返りするようになった長男を床に敷いたプレイマットに寝かせています。

「エアコンがある部屋だけでなく、廊下や浴室でもひんやりすると感じることがありません。リビングから出てもずっと同じ室温で過ごせることがこんなにも快適なんだと、体験してみて初めてわかりました」

「そういえば前のマンションで悩まされていた窓ガラスの結露もないですね。快適なのが当たり前になってしまって気にしていませんでしたが...」

フローリングがひんやりしていないので、長男は床に敷いたマットの上で寝返りし放題
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

暖房器具は、入居時にあらかじめリビングに設置してあったエアコン1台のみ。冬はこのエアコンを23℃に設定し、常にオンの状態にしています。

「電気料金が値上がりしたとき、24時間つけっぱなしだったので電気代が高くなるだろうとヒヤヒヤしていたのですが、実際はそれほどでもありませんでした」

猫がいるため空気清浄機もフル稼働させていますが、月々の電気代は以前住んでいたマンションよりずいぶん安くなったのだそう。

アカリさんが「やっぱり、マンションの屋上に太陽光パネルがあるのは大きいよね」とマサキさんに尋ねます。マサキさんはおもむろにコンパクトなタブレットを持ってきました。電源を入れると、太陽光パネルの発電状況と電気の消費量のグラフがリアルタイムで画面に映し出されました。

エネルギー消費量が把握できる「エネルギー管理タブレット(オプション) 」
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

この賃貸住宅は積水ハウスの「シャーメゾンZEH」と呼ぶシリーズです。

ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、省エネと創エネを組み合わせ、快適な室内環境を実現しながら、年間の一次エネルギー消費の収支をゼロにすることを目指した住宅のこと。

つまり、遮熱断熱の効果がある複層ガラスなどによる住まいの高断熱化に加え、高効率のエアコンや給湯システムによって家庭で使うエネルギーを抑えたうえで、太陽光発電によってエネルギーを創り出すことで、エネルギー収支のプラスマイナスゼロを目指します。

イノウエさん宅もこの仕様によって高断熱かつ省エネであるうえ、太陽光発電によって創り出された電気が供給されているため、電気料金の総額が安くなっていたのでした。

ポカポカする窓際が猫の特等席
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

余った電気が収入になる

太陽光発電では日差しの多い昼間や夏場に創り出す電力が多くなるため、家庭で電力を消費する量よりも創り出す電力量のほうが多くなることがあります。余った電力を電力会社などに「売電(ばいでん)」すると、電力会社からその料金が支払われます。

賃貸の集合住宅の場合、建築主(オーナー)や建物の建築会社が売電収入の恩恵を受けるタイプもありますが、入居者それぞれが売電収入を得ることができる「入居者売電」がデフォルトなのが積水ハウスのシャーメゾンZEHの特徴です。

太陽光発電を各戸ごとに接続しているため、入居者が割り当てられた太陽光パネルの電力の収支を「エネルギー管理タブレット」で確認できるだけでなく、使わなかったり節電したりして余った電力を売って毎月収入を得られるのです。

特に節電を意識してはいないというイノウエさん宅でも、夏場は4000円近い売電収入がありました。使ったぶんの電気料金とは相殺されず別に振り込まれるため「ボーナスのような感覚」だそうです。

イノウエさん宅の毎月の売電収入。「こまめにチェックしてなかったけどこんなに...!」と驚く夫婦
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

アカリさんは、こう話します。

「売電をはじめる手続きが簡単すぎたことや、日ごろから何かを我慢している自覚もないので、売電していることを意識するタイミングがほとんどありません。知らないうちにけっこうな金額が振り込まれていてびっくりしました」

「入居者売電」は、入居者が節電に取り組むとそのぶん売電収入が上がるというメリットもあります。ただ、シャーメゾンZEHを選ぶ人の中には、アカリさんのようにZEHや売電の仕組みをあまり知らなかったり、そもそもZEHの賃貸住宅だということを知らずに入居する人が少なくありません。

ZEHの認知度は1割

積水ハウスによる入居者アンケートでは、シャーメゾンZEHについて説明を受ける前から知っていたという人はたったの1割。物件を選んだ理由は「新築だから」「交通アクセスが便利だから」「広さや間取りが気に入ったから」など一般的な条件が上位を占め、「光熱費が安くなるから」「太陽光発電があるから」「断熱性能が高いから」などZEHならではの理由は軒並み下位となっていました。

一方、入居後の満足度について聞くと「光熱費が安くなるから」「太陽光発電があるから」「断熱性能が高いから」が急浮上して上位に食い込みました。

ホテルのような物件の魅力にひかれて、住んでみたら光熱費が安かった。このように付加価値としてZEHを初体験している人も少なくないようです。

シャーメゾンZEHの実例。太陽光パネルが各住戸で利用できる
積水ハウス株式会社 提供

イノウエさん夫妻は、家族も増えたため将来はマイホームをもつことを目標にしています。分譲マンションの見学もはじめていますが、賃貸住宅でZEHを体験したいま、デザインや立地だけでなくZEHも一つのポイントになっているのだそう。

「気に入った分譲マンションがZEHだったんです。いまはZEHだとわかると、ラッキー!って思います」(アカリさん)

積水ハウスではすでに新築戸建ての約9割でZEHが採用されており、分譲マンションの「グランドメゾン」も2023年度以降に販売する物件はすべてZEH仕様に。

賃貸住宅でもZEHの普及を急ピッチで進めており、2021年度までの累積受注戸数は1万2千戸を超えています。賃貸を含む集合住宅のZEH供給実績は業界ナンバーワンで、入居者自身が太陽光発電を使え、売電すれば収入を得られる点も大きな特徴です。

住むだけでエコ

そもそも国がZEHの採用を進める理由は、地球温暖化などを引き起こす恐れのあるCO2の排出量のうち16%を占める家庭部門の排出量を減らすねらいがあります。

家庭部門の排出量の内訳をみると、戸建住宅が69%、賃貸住宅とマンションで計31%。賃貸住宅とマンションの排出量も日本全体のCO2排出量に少なからず影響しているのです。

CO2排出量
出典 : 積水ハウス株式会社

衣食住のうち、長く着られるものを選んだり、フードロスをなくしたりする「衣食」の取り組みは一般的に浸透していますが、「住」についてはハードルが高いと感じている人もいるのではないでしょうか。しかし「住」に関しても、意外とお手軽に環境負荷を減らすことに貢献できるのです。

「住むだけでお得なだけでなく、快適に住むだけで環境にいいことができるのっていいですよね。普段はゴミが出にくい商品を選ぶくらいしかできていなくて...」とアカリさん。

賃貸ZEHは、環境を意識した取り組みを自分ごととしてはじめる第一歩となる、一つの選択肢でもあるのです。

シャーメゾンZEHの詳細はこちら

【関連記事】「もう小学生なんだから」とは言いたくないから。ほめ上手になる部屋づくり6つのポイント

著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
SHARE