小学生からはじめる部屋づくり。片付けで「生きる力」を育む6つのポイント

小林明子

子育ての悩みのひとつは、部屋が散らかること。リモートワークで在宅時間が増えるとますます気になり、つい「片付けなさい」と子どもを叱ってしまうことも。しかし、大人にとってはガラクタでも、子どもにとっては大事な宝物だということもあります。子どもが大切にしているものや子どもの気持ちを尊重しつつ、家族にとって心地よい空間づくりはできるのでしょうか。3人の小学生が暮らすお宅にお邪魔して考えました。

小学3年生の男の子と小学1年生の双子の女の子を育てている方尺真美さんの自宅は、栃木県の閑静な住宅地にあります。部屋ごとに異なる色のアクセントクロスや床のタイル、間取りまで、真美さんがじっくり考え抜いて選んだものばかりです。

2019年に家が完成したとき、長男はまだ小学校に入学する前で、双子の子育てにも手がかかる時期でした。

そろそろ家づくりを考えたいけれど、汚したり散らかしたりはしてほしくないというのは、小さな子どもを育てる親にとって悩ましいポイントです。しかし真美さんは、こう考えました。

「私が好きなものに囲まれて心地よいのと同じように、子どもたちにも好きなものやことを大切にしてほしい。自分でものを選び、人生の判断ができるようになってほしいから」

積水ハウス
3人それぞれが好きな色を選んだランドセルは、学校の持ちものとともにチェストに。朝は各自で支度をしています。
Yuiko Nagasawa

子どもの好きなものってなんだろう。子どもと同じ目線で家の中を見渡すと、子どもなりに小さな拠点をつくっていて、そこから興味の世界を広げようとしていることがわかります。

大人には何でもないようなものが好奇心の的になっていたり、さまざまな素材に落書きをして感触を楽しんだり。隅っこや狭いところに入り込むのが居心地がよかったり、おもちゃを散らかしても、お気に入りのぬいぐるみだけは枕元にきちんと並べていたり。このような子どもの特性は、誰しも心当たりがあるのではないでしょうか。

家族の空間づくりを考えるうえでは、子どもも自分の感性で愛着のある空間(テリトリー)を育んでいるというのは知っておきたい点です。子どもの「居どころ」について研究を続けている住生活研究の専門家の河﨑由美子さんは、こう話します。

「子どもの成長に合わせた空間づくりは、感性や社会性など、大人になるまでに身につけてほしい『生きる力』を育むことにつながります。子どもの発達に合わせたものの管理ルールや空間づくりをすれば、自分でできることは自然と増えていくものです」

子どもの行動を変えようとするのではなく、子どもの行動に合わせて空間の使い方を変えていく。確かに理想的ですが、そこまで心が広くなれないし、家も広くないし……というのも現実です。そこで河﨑さんに、大人も楽しみながら工夫できるポイントを教えてもらいました。

① 子どもがインテリアを決める

積水ハウス
将来は双子の姉と妹の部屋に仕切ることができる方尺家の子ども部屋。小学生になり、姉妹で好みの違いも生まれています。「双子だからおそろいを着せたい思いもありますが、親の好みではなく自分の感性で好きな色を選んで冒険してほしいです」(真美さん)
Yuiko Nagasawa

河﨑さん 子どもの洋服や持ちものは親が選んでいることが多いと思いますが、小学校入学をきっかけに、ランドセルをはじめとする身の回りのものは自分自身で選んで買う経験を積むようにするといいと思います。中学年ごろからはそれぞれの好みや趣味が生まれ始めます。子どもが好きだというものを買ってあげると愛着が生まれ、自然とものを大切にすることにつながります 。

子ども部屋の管理も同じで、枕カバーや布団カバーなど、インテリアのポイントになるものを自分で決めると、自分の感性でつくる愛着ある空間(居どころ)だという感覚が芽生え、自分で片付けたり、お掃除をしたりするきっかけになります。それを繰り返すことで、自分で選択、判断し、ものを管理する自主性が高まっていきます。

もし個室を与えるのであれば、カーテンや壁のアクセントクロスを選ぶのも貴重な機会です。何回も買い換えるものではないということを伝えたうえで、カタログやインテリアの本を見ながら子どもと一緒に考えてみるのはどうでしょうか。

② 子どもが作品を飾る

積水ハウス
幼稚園でつくった作品は自宅で飾ったあと、それぞれのボックスにまとめて保管。「あふれそうになったら、どれを処分してどれを残すかは子どもに聞いて決めています」(真美さん)
Yuiko Nagasawa

河﨑さん 子どもが保育園や幼稚園、学校から持ち帰ってきた作品は、ぜひ自宅でも飾ってみてください。どこに飾りたいかも、子どもに聞いてみてください。その子なりにつくるときにコンセプトがあって「この場所にこういうふうに飾りたい」というイメージを持っていることがあるからです。

子どもは自分の目線でちょうどいいところに飾りますから、壁の中途半端な高さに貼ってみたり、傾いていたりすることがよくあります。それを直さずに「いいところに飾れたね」とほめてあげてほしいと思います。

親としてはインテリアが気になるかもしれませんが、高学年になると「飾らなくてもいい」と言うようになる子もいますから、ごく限られた期間の「作品展」として楽しんでほしいです。

③ 本物のアートを身近に置く

積水ハウス
真美さんが美術展で気に入ったフランスの画家マリー・ローランサンの「接吻」をダイニングに。子どもたちはアートのある空間で工作に没頭します。
Yuiko Nagasawa

河﨑さん 本物のアートが家の中にあると、子どもたちと語れることが増えます。絵画や工芸、食器など、ものにまつわるストーリーを一緒に話してみてください。

色や手触りなど子どもにもわかりやすいことを切り口に、なぜ親がその作品を気に入っているのか、似たようなデザインの量産品とはどこが違うのかなど会話はどんどん深まります。

大事なのは、子どもの発言を否定しないことです。「そんなふうに感じたんだね」と大人が興味をもって聞いてあげることで、感じ方は人それぞれ違っていていい、だから自分がどう感じたかを率直に表現していい、と子どもが安心できることが大切なのです。

アートに限らず植物や動物も、観察したことを言葉にすることによって、もっと知りたいという子どもの本来の欲求を刺激します。「バッタの足にはとげがついているね」「足が曲がるのはなぜだろう」「どうしてあんなに跳ねることができるのかな」と大人が子どもに逆質問をしてみるのもおもしろいです。

すぐに答えを教えるのではなく、「どうやったら答えがわかると思う?」とワンクッションおいて、友達に聞く機会をつくったり図鑑やネットで調べる方法を教えたりすると、学びのサイクルが自然な形で身についていくでしょう。

④ 仕事と勉強は背中合わせで

積水ハウス
在宅勤務が多い真美さんは、ダイニングにカウンターを設置。コーヒーを飲んだりパソコンで仕事をしたりしながら、ダイニングで勉強する子どもたちの質問に答えています。カウンターの上はマグネットボードになっていて、子どもの作品や学校の連絡プリントを貼ることができます。
Yuiko Nagasawa

河﨑さん 積水ハウスの住生活研究所が2023年1月に実施した「小学生の子どもとの暮らしに関する調査 」によると、子ども部屋を持っている小学生の76.5%が、自室ではなくリビング・ダイニングで勉強していることがわかりました。

子ども部屋を与えるタイミングは「小学1年生」が27.8%と最多でしたが、勉強や遊びは引き続きリビング・ダイニングでしている子どもが多いです。

子ども調査
小学生の子どもと暮らしに関する調査」(2023年)より、子ども部屋を与えている人を対象にしたアンケート
出典:積水ハウス 住生活研究所 / 編集 OTEMOTO

食卓とは別に、勉強専用のスペースを確保する家庭も近年は増えています。食事の準備などで集中が途切れないようにするためです。コロナ禍で在宅勤務が浸透したことで、同じ空間で子どもは勉強、親は仕事というシチュエーションも珍しくなくなりました。

子どもの様子を見ることができるとメリットを感じる人がいる一方で、仕事に集中できない、ウェブ会議に子どもの声が入ってしまうといった悩みも寄せられています。

幼いうちは目を離すわけにはいきませんが、小学校中学年以上であれば、親が背中を向ける位置で仕事をすることをオススメします。正面や隣に座ってアイコンタクトを取ると「今、話しかけてもいいのかな」と子どもは感じてしまいがちで、親子ともに集中しづらくなります。

親が仕事に集中している真剣な背中を見せることで、「今は集中して勉強する時間なんだ」というメッセージを子どもは受け止めることでしょう。

⑤ 子どもの居どころを広げていく

積水ハウス
方尺家のリビングは、周りの床より少し低めに段差をつけた「ピットリビング」。ダイニングやキッチンと同じ空間でありながらゾーンがわかれているため、子どもたちの基地のような役割も。「ときどきここに布団を敷いて家族みんなで寝ています」(真美さん)
Yuiko Nagasawa

河﨑さん 子どもの居どころ(テリトリー)は、成長や活動範囲の広がりにつれて拡大します。特に小学1年生は、小学校や通学路など、親の目が届かない場所にテリトリーができる時期。初めて親のテリトリーから離れる時期といってもいいでしょう。

自分の分身のようにそばにいて守ってきた幼児期を過ぎると、親が知らない子どもの社会の中で、その子自身の人生を歩んでいきます。親といえども子どもを守りきることはできなくなり、子ども自身が生きるために必要な力を身につけてもらうしかありません。

川崎由美子さん
河﨑由美子(かわさき・ゆみこ) / 積水ハウス フェロー R&D本部
1987年入社。高校入学までの12年間を海外で過ごした経験や子育て経験などを生かし、総合住宅研究所でキッズデザイン、ペット共生、収納、食空間など、日々の生活に密着した分野の研究開発全般に携わる。執行役員、住生活研究所長を経て2023年4月より現職。一級建築士。
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

⑥家を安心できる場所に

河﨑さん 積水ハウスでは、人生を通して重要になるこの「生きる力」について、「感性」「身体」「知性」「社会性」の4つの視点から子どもの発達を研究し、子どものための住まいや空間の在り方を提案してきました。

家は、大人と同じように子どもにとっても、疲れたときやつらいときにくつろいで安心できる場所であり、こころと身体を育む場所でもあります。その家を起点に自分の居どころ(テリトリー)を彩りながら広げていく子どもの背中を、親はあたたかく見守っていきたいですね。


記事についてのアンケートを募集しています

記事で紹介した6つのポイント、いかがでしたでしょうか。感想やご意見はこちらのアンケートにお寄せください。

著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
SHARE