【クイズ】30代が実は意味を知らないSDGsキーワード13選
毎日のように「SDGs」という単語を耳にするようになりましたが、「コンプライアンス」「トレーサビリティ」「シェアリングエコノミー」など、聞き慣れない横文字ワードもたくさん。実際、どのくらい浸透しているのでしょう。ニッセイ基礎研究所がサステナビリティに関するキーワードの認知度を調査したところ、シニア世代よりもZ世代の認知度のほうが低いことがわかりました。今から紹介する13のキーワード、いくつ聞いたことがありますか?
ニッセイ基礎研究所は2023年8月、サステナビリティに関わる意識調査を実施。全国の20〜74歳の男女2550人に、サステナビリティに関する約40のキーワードをあげて「聞いたことがあるか」「内容まで知っているか」を尋ねました。
その結果、認知度が最も高かったキーワードは「SDGs」で、「聞いたことがある」が70.0%、「内容まで知っている」が43.9%でした。
ちなみにSDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略称で、持続可能でよりよい世界を目指すために、17のゴールと169のターゲットから構成された国際目標です。
次に認知度が高かったキーワードは「再生可能エネルギー」で、「聞いたことがある」が56.7%、「内容まで知っている」が34.5%でした。
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど繰り返し利用できるエネルギーのこと。温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)を排出する石油や石炭などの化石燃料と比べ、環境にやさしいとされています。
内容までは知らない
ニッセイ基礎研究所の生活研究部で上席研究員をつとめる久我尚子さんは、レポート「サステナビリティに関わる意識と消費行動」で調査結果をこう分析しています。
「約40のキーワードのうち、内容まで十分に理解されているものは半数に満たないものの、『SDGs』は実に7割、『再生可能エネルギー』は6割の消費者が耳にするようになり、サステナビリティに関わる事柄は珍しいものではなくなっています。生活との関わりが比較的強いキーワードは、耳にしたことがあれば内容の理解も進んでいるようです」
そこでこの調査結果をもとに、クイズ形式でキーワードを紹介していきます。ここでは「聞いたことがある」を「認知度」、「内容まで知っている」を「理解度」と表現し、各キーワードの説明はOTEMOTO編集部が作成しています。
難易度 ☆
認知度50%未満、2人に1人が「聞いたことがない」
【 第1問 】
「本来は食べられるのに捨てられてしまう食品」は?
(認知度49.0%、理解度43.2%)
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正解は、
フードロス
日本のフードロス(食品ロス)の量は年間523万トン。1人あたり1年間で約42キロ、1日あたり約114グラムと推計されています。毎日、茶碗1杯分のご飯に近い量を捨てていることになるのです。
【 第2問 】
「温室効果ガスの排出量から吸収量や除去量を差し引いて、全体としてゼロにすること」は?
(認知度48.5%、理解度25.9%)
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正解は、
カーボンニュートラル
2020年10月、当時の菅義偉首相が臨時国会で、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。
ちなみに「温室効果ガス」には、二酸化炭素(CO2)のほか、メタン、一酸化二窒素、フロンなどがあり、増えすぎると地球温暖化の一因となります。
【 第3問 】
「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」は?
(認知度45.3%、理解度34.8%)
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正解は、
健康寿命
介護や寝たきりの期間が長くなると生活の質が低下したり、社会保障の負担が大きくなるため、世界保健機関(WHO)が2000年に提唱した新しい健康指標。
日本の平均寿命は2019年、男性が81.41歳、女性が87.45歳。一方、健康寿命は男性が72.68歳、女性75.38歳となっています。健康寿命の男女平均は74.1歳で、世界183カ国のトップです。
【 第4問 】
「家事や家族の身の回りの世話などを日常的に担っている18歳未満の子ども」は?
(認知度42.4%、理解度37.5%)
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正解は、
ヤングケアラー
厚生労働省の調査では、中学2年生の17人に1人が、世話をしている家族が「いる」と回答。クラスに1人か2人はヤングケアラーがいる可能性があることがわかりました。勉強や部活動の時間がとれず、友達と遊べなくなっても、「家族の手伝いをするのは当たり前」だと一人で抱え込んでいる子もおり、表面化しづらい問題があります。
ヤングケアラーに関する相談窓口はこちら
難易度 ☆☆
認知度40%未満、5人に3人が「聞いたことがない」
【 第5問 】
「集団において、年齢、性別、人種、障害、性自認や性的指向などがさまざまな人たちが集まった状態」は?
(認知度38.9%、理解度17.2%)
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正解は、
ダイバーシティ
日本語では「多様性」と訳され、企業で多様な人材を登用することで競争力を高める経営戦略の文脈でも使われます。
【 第6問 】
「企業や個人が法令や社会規範を守ること」は?
(認知度38.9%、理解度29.6%)
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正解は、
コンプライアンス
日本語では「法令遵守」ともいいますが、法律や条例だけでなく、社会的規範や企業倫理などの幅広いルールを守ることで、企業価値を損なわないように活動するという意味に広がっています。
【 第7問 】
「地域が抱える雇用や人口減少の課題を解決し、日本全体を活性化させる取り組み」は?
(認知度36.8%、理解度17.8%)
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正解は、
地方創生
地方は少子化だけでなく都市部への人口流出という課題も抱えています。民間の研究組織が2014年、「2040年には全国の約半数の自治体が『消滅可能性都市』に該当する」という推計を発表し、第二次安倍内閣が看板政策として地方創生を打ち出しました。
【 第8問 】
「性的マイノリティの人たちを総称する言葉」は?
(認知度34.8%、理解度26.6%)
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正解は、
LGBTQ+
性的指向であるレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、性自認に関するトランスジェンダー(Transgender)、さらにクエスチョニング(Questioning)やクィア(Queer)など、さまざまな性のあり方を包括的に表す意味で「LGBTQ+」という言葉が使われています。
20代30代の2割「知っているものがない」
知っているキーワードはいくつあったでしょうか。
ところで、回答を年代別に見ると、全体的に年齢が高いほど「聞いたことがある」「内容まで知っている」と答えた人が多い傾向がありました。
「よく世間では『Z世代はサステナブル意識や社会貢献意識が高い』と言われるようですが、調査結果を見ると、年齢が高いほどサステナビリティに関わるキーワードを理解しています」と久我さん。
「昔の若者と比べればZ世代を含む今の若者はサステナブル意識が高いものの、現時点では年齢が高いほど人生経験が長いぶん、社会課題についても幅広い知識を蓄えており、サステナビリティについての理解も進んでいると考えられます」
また、約40のキーワードのうち「知っているものはない」と回答した人は全体では14.0%でしたが、20代は22.6%、30代は22.8%が「知っているものはない」と回答しました。
そこでここからは、「聞いたことがある」と答えた人が全年代と比べて特に20代と30代で少なかったキーワードを紹介していきます。全年代でも認知度と理解度が低めだったキーワードなので、激ムズです。
難易度 ☆☆☆
20代30代の認知度20%未満、5人に4人が「聞いたことがない」
【 第9問 】
「海洋生態系への影響が懸念されている微細なプラスチック類」は?
(認知度 全年代27.6%、20代15.9%、30代13.8%)
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正解は、
マイクロプラスチック
海洋に流出したプラスチックごみが、波や紫外線の影響で砕けて5ミリ以下に小さくなったもの。また、洗顔料や歯磨き粉のスクラブ剤であるマイクロビーズや、洗濯した衣料から流出する合成繊維もマイクロプラスチックに含まれます。表面に化学物質が吸着しやすく海洋生態系への影響が懸念されていますが、効率よく回収する方法はありません。
【 第10問 】
「デジタル技術を活用して地域の機能やサービスを効率化し、快適性や利便性の向上を目指す都市」は?
(認知度 全年代27.5%、20代17.7%、30代16.4%)
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正解は、
スマートシティ
交通渋滞やエネルギー不足などの社会課題を解決するとともに、防災、ビジネス創出、サービス効率化などで生活の質を向上させ、持続可能な都市を実現するねらいがあり、全国で実証事業が進められています。
【 第11問 】
「義務教育を妨げる労働や、法律で禁止されている18歳未満の危険で有害な労働」は?
(認知度 全年代26.8%、20代17.0%、30代14.8%)
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正解は、
児童労働
貧困、差別、慣習、武力紛争や自然災害などさまざまな要因から働かざるを得ず、教育の機会を奪われている子どもたちがいます。ユニセフによると、児童労働に従事する5〜17歳の子どもは、2020年時点で約1億6000万人で、世界の子どもの10人に1人近くに相当します。その約半数は、人身売買や子ども兵、強制労働など、危険な労働に従事しています。
【 第12問 】
「旅先など普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事をしつつ、豊かな暮らしも両立すること」は?
(認知度 全年代26.7%、20代12.7%、30代14.8%)
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正解は、
ワーケーション
新型コロナウイルスの感染拡大によって浸透したリモートワークを活用することで広がった新たな働き方で、Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。厚生労働省のガイドラインでは2021年、ワーケーションがテレワークの一形態として分類されています。
難易度 ☆☆☆☆
20代30代の認知度10%未満、10人に9人が「聞いたことがない」
【 第13問 】
「商品の生産から流通、消費までの過程が追跡できること」は?
(認知度 全年代15.4%、20代9.2%、30代7.1%)
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正解は、
トレーサビリティ
日本語では「追跡可能性」とも訳され、食品や洋服、日用品などで、安全な原材料が使われているか、生産者が過酷な労働を強いられていないか、製造や輸送や廃棄の過程で環境に負荷をかけすぎていないかなどの履歴を追跡できることを指します。
値段重視でもできること
このほか、「ウェルビーイング(心身と社会的に健康であること)」「シェアリングエコノミー(個人がモノや場所やスキルを共有すること)」「フェムテック(女性の健康の課題を解決するテクノロジー)」なども、20代30代の認知度は1割を切るという結果に。
一方で、ビジネスや社会貢献活動を通してこれらの概念に積極的に向き合っている20代30代もいることから、認知度や理解度は二極化している可能性も考えられます。
ニッセイ基礎研究所の調査では、サステナビリティにも関わる消費行動についても約30の項目をあげて、実践しているかどうかを聞いています。
実践している人が最も多かったのは「エコバックの持参」で73.8%でした。「リサイクルできるごみを分別する」(57.0%)、「洗剤やシャンプーなどは詰め替えできる製品や量り売りのものを買う」(51.0%)、「長く使える製品を買う」(45.7%)などが続きました。
ただ、価格よりもサステナビリティを優先して製品を選ぶという人は、多くはありませんでした。
「価格が安くても、生産や製造時に人権に問題のある製品は買わないようにしている」(8.0%)
「価格が安くても、地球環境や社会に悪影響のある製品は買わないようにしている」(7.5%)
「価格が多少高くても、環境や社会問題に配慮された製品を買うようにしている」(5.4%)
「価格が多少高くても、環境や社会問題に積極的に取り組む企業の製品を買うようにしている」(4.3%)
出典:ニッセイ基礎研究所レポート「サステナビリティに関わる意識と消費行動」
久我さんはこう分析しています。
「エコバッグの持参などの行動は浸透しつつある一方で、価格よりもサステナビリティを優先して製品を選ぶ消費者はごく少数派です」
その背景の一つには、昨今の物価高があるそうです。環境に配慮することで割高になる製品も多いため、低価格志向が高まりがちである今、消費者が手を伸ばしづらくなっているといいます。
そんな中でもサステナビリティを意識した選択はできる、と久我さん。
「無駄なモノを買わずにできるだけ必要なモノだけを買う、モノを大切に長く使う、リサイクルするといった行動でも、持続可能な社会づくりには貢献できるでしょう」