「夏休みの宿題」で終わらせない。自由研究を子どもの未来につなげるために

小林明子

夏休みの自由研究に頭を悩ませているお子さんに朗報です!材料費1000円以下で、研究者のような実験ができる魔法の書を見つけました。

ミライの科学にふれてみよう おうちじっけん号
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

小学生NFTアーティストの両親

最新テクノロジーの仕組みを子ども向けの実験にアレンジして紹介する図鑑『ミライの科学にふれてみよう おうちじっけん号』(CCCメディアハウス)。

著者は、NFTアーティストとして活躍する小学4年生のZombie Zoo Keeperさんの両親でもあるアーティストのお二人。慶應義塾大学大学院専任講師の山岡潤一さんと、東京芸術大学非常勤講師の草野絵美さんです。

山岡潤一さんと草野絵美さんの家族
提供写真

図鑑では、3Dプリンターやドローン、ロボット、AR(拡張現実)などの最新テクノロジーの仕組みを、子どもにもわかりやすいようにたくさんの写真やイラストで解説。そのうえで、実際にテクノロジーの仕組みを体験できる実験のやり方を紹介しています。

「STEAM教育系の書籍やプログラミングを学べる本はたくさんあるものの、実験をしたら終わりというものが多く、研究者としては物足りなく感じていました」

著者の山岡さんはこう話します。

新たなテクノロジーのつくり手になるかもしれない子どもたちには、まずはいま世の中にあるテクノロジーの仕組みを知ってほしい。知ったうえでどう活用していくかを考えるきっかけをつくりたい。そんな研究者ならではの思いがありました。

「最先端のテクノロジーについて手を動かしながら学び、試し、身の回りでどのように使われているのかがわかる図鑑をつくりました。さらに、自分ならどうしたいかまで考えを深めてみてほしいです」

3Dプリンターになりきる

グルーガンでつくる「なりきり3Dプリンター」
出典 : 『ミライの科学にふれてみよう おうちじっけん号

ものづくりのさまざまな場面で活用されている「3Dプリンター」は、インクの代わりにプラスチックを少しずつ積み重ねることで立体の製品をつくる仕組みです。プラスチックを熱で溶かすヒーターと、縦・横・上に動くモーターのはたらきによって、部品を組み立てなくても複雑な形をつくり出すことができます。

図鑑ではこの仕組みを「ソフトクリームみたいに下から積み重ねていくんだ」と身近な例にたとえて解説。子ども自身が縦・横・上に動くモーターになりきって立体をつくる「なりきり3Dプリンター」という実験を紹介しています。

「なりきり3Dプリンター」の道具と材料は、グルーガンとトレーシングペーパーのみ。グルーガンで温めて溶かしたグルースティックを少しずつ出して何層にも積み重ねたり、複数のパーツをくっつけたりして立体にしていきます。

「家庭で3Dプリンターを買うのは大変ですが、グルーガンでプラスチックを溶かして積み重ねるのは3Dプリンターと同じ原理です。3Dプリンターの仕組みについて学びつつ、自分が3Dプリンターになりきることで、技術を活用する楽しさを体感してもらえたら」(山岡さん)

クリアファイルでARメガネ

クリアファイルを使った「手づくりARメガネ」
出典 : 『ミライの科学にふれてみよう おうちじっけん号

AR(拡張現実)については、スマートフォンのゲーム「ポケモンGO」を例に、目の前の現実世界に情報を足すことだとシンプルに解説しています。

実験ではクリアファイルで「ARメガネ」を手づくりし、スマホの映像と現実世界を重ねて見る体験ができます。

磁石と砂鉄のはたらきを利用した「動く磁石スライム」
出典 : 『ミライの科学にふれてみよう おうちじっけん号

キャリア教育の要素も

図鑑の対象は小学校の全学年で、それぞれの実験の所要時間は20〜60分程度です。

子どもだけでできる実験もありますが、中には火を使う実験や少し難しいものもあるので、親子での体験を勧めています。

LEDやボタン電池のように、身の回りになくあらかじめ準備しなければならない材料を使う実験もあります。すべてネット通販や百均で合計1000円以下でそろえられるので、週末に向けて子どもと話し合って準備をすることを想定しています。

「少しの手間とお金をかけるだけで、子どもが体験できる世界が広がります」(山岡さん)

タッチパネルの仕組みを学ぶ「えんぴつセンサー・スイッチ」
出典 : 『ミライの科学にふれてみよう おうちじっけん号

また、山岡さんは「あとがき」にもこだわったと話します。

「この本をきっかけにもっと詳しく知りたいと思ったら、どんどん専門的なことを調べていってほしいです。研究者になって発明をしたいと思う子もいるかもしれない。そこで、研究のやり方を最後に紹介しています」

研究者が発明したものは、「作る人」「デザインする人」「サービスを考える人」などたくさんの人が関わることによって世の中に届けられるということも説明し、子ども向けのキャリア教育の要素ももたせています。

「このテクノロジーは何に使えるんだろう、自分ならどう活用するだろう、自分は何をすることが好きなんだろう、と思考や会話をふくらませてほしい。未来に視点をおいて、夏休みに親子で話し合うきっかけにしてもらえるとうれしいです」 

ミライの科学にふれてみよう おうちじっけん号』(CCCメディアハウス / 税抜1800円)
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

学校のこれから

私たちが経験した学校のよいところ、よくなかったところを、大人になったいまだからこそ声をあげ、これからの子どもたちがのびのびと成長できる場所づくりにつなげていけたらと思います。ぜひアンケートにご協力をお願いします。

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著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
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