女性や若手にチャンスをつくるために、中高年男性たちが「退場」する前にしておくこと
3月8日は国際女性デー。ジェンダー平等を推進しようと、日本でもさまざまなイベントが開催されています。男尊女卑の価値観や性別役割分業が根強く残る社会のあり方を変えるため、「男性が行動を改める必要がある」と声をあげる男性たちも増えてきました。
2023年3月1日に東京・渋谷で開かれたトークイベント「Let’s Talk About Us.『ツッコミから始めるジェンダー平等』」は、JustCo Japanと選択的夫婦別姓・全国陳情アクションが共催し、オンラインとオフライン合わせて約350人が参加しました。
「日常の中でカジュアルにやってしまいがちな女性差別や発言」の事例を集め、6人のゲストとともに男女平等を実現するためのアクションを考えるという内容。
男性ゲストとしては、選択的夫婦別姓や男性育休について発信しているサイボウズ社長の青野慶久さん、上智大学国際教養学部教授の中野晃一さん、文筆業で恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さんが登壇しました。
清田さんは、「社内結婚で妻が先に出世したことで、夫が同僚や上司にからかわれた」といった相談を男性から受けた経験を例にあげ、「男性同士の会話の中で、女性差別や性別役割分業の意識が再生産されがち。会話の内容を変えていかなければならない」と語りました。
青野さんは、社長として育児休業や時短勤務を取得した経験から「長時間労働などの"昭和的"な働き方が、多様な属性の人たちの活躍を阻んできた」と指摘しました。
「社長である私が16時に帰るようになるとすべての会議が16時までに終わるようになり、誰もが会議に参加できるようになりました。時間制約のない男性しか活躍できないような働き方は、労働力の4分の3ほどをみすみす捨ててしまっていたといえます」
反省しない人がいる
ゲストでジャーナリストの浜田敬子さんは、均等法第一世代として男性中心の組織で生き延びるために「なるべく波風を立てないように意識してきた」といいます。
「男性たちのルールに適応しようとして我慢してきたことで、感覚が麻痺していました。その結果、後輩の女性たちに同じ状況を強いることになってしまったことを反省しています」
一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事の能條桃子さんはこう付け加えました。
「先輩女性たちから『反省している』という言葉を聞くたびに苦しくなります。均等法世代の女性たちに我慢を強いてきた人たちこそ、何の反省もしていないからです」
能條さんは2021年、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗・元首相の「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」という発言に抗議し、15万7000筆を超える署名を集めました。森元首相は発言を撤回して会長を辞任しましたが、その後も「本当の話をするので叱られる」などと不満を表明したことが報じられています。
退場の仕方を考える
YouTubeで「男性のためのフェミニズム入門」を配信している上智大学教授の中野晃一さんは、このように話します。
「自分のような中高年男性が意思決定の場に多すぎるので、『退場』していかなければなりません。ただし、ジェンダー感覚があるおじさんが自主退場した結果、反省のない人だけが居座るのもまずい。目配りしつつ、退場の仕方を考える必要があるのです」
2022年には、国土交通省が主催するまちづくりに関する講座の講師25人のうち女性がひとりもいなかったことに批判が集まりました。女性活躍を推進するプロジェクトが男性ばかりで構成されていたケースもありました。このような男性ばかりの討論会はマネル(manel)、男性ばかりの会議はマンファレンス(manference)と呼ばれています。
中野さんはYouTube動画「中高年男性はどう退場する?」で、男性が退場する前にすべきことを解説しています。一部を紹介します。
・マネルへの参加を断る
自分は代替可能な人間であると自覚する。自分を含めて同じ属性の男性だけで議論しても社会的に意味がない、と積極的に問題視していく。
・場を支配するふるまいをやめる
会議で他の人が話す前に話さないようにする。自分が若手や女性を威圧していないか気にかけ、他の男性が話し合いを独占しないよう必要に応じて介入する。
・女性のサポート役に回る
女性が誹謗中傷にさらされたり負担が過重になったりしないよう、裏方に回ってサポートする。
中野さんは「女性を男性並みにするという発想ではなく、男性性のあり方を変えるところから取り組まなければなりません」と語っています。
男性が変わるために
ほかにも「男性が変わるべき」だと男性が男性たちに向けて呼びかけている動画を紹介します(動画内のデータなどは公開当時のもの)。
「女性をジロジロ見たことは?」
Most guys don’t look in the mirror & see a problem. But it’s staring us in the face. Sexual violence begins long before you think it does. #DontBeThatGuy pic.twitter.com/78B05S5lRk
— Don't be That Guy (@ThatGuyScotland) October 13, 2021
スコットランド警察が性暴力防止キャンペーンでつくった啓発動画。出演する男性が「タクシーで女性を自宅に連れて行ったことはない?」「バスの中で女性をジロジロ見たことはない?」などと男性の行動について問いかけた後、「Don't Be That Guy(そんなやつにはなるな)」と結んでいます。
「性暴力は、男性の問題だ」
映画監督のジャクソン・カッツさんはTEDで、「性暴力は『女性の問題』ではなく『男性の問題』」として、いま有力な立場にある男性リーダーが沈黙を破るべきだと語っています。
「家族があって企業がある」
「男性育休100%」を宣言した7社の経営者が、自身が子育てよりも仕事を優先してきた過去の反省を述べたうえで、「従業員が家族との時間を大切にできるように」と現在の考えを語っています。
※トップ画像 Adobe Stock / polkadot