「この子、いつもと違う」災害時のために知っておきたい、子どもの反応と対処法
9月1日は「防災の日」。大地震や豪雨などの自然災害はいつ起こるかわからないため、日ごろから備えが必要です。緊急時には生活だけでなく心も不安定になります。災害や事件事故などで大きなストレスを抱えた子どもに対して、私たちができることはあるのでしょうか。専門家に聞きました。
【関連記事】家族みんなで生き残るために、備えておきたい防災グッズ
- 「より幼い行動に戻る」(0〜6歳)
- 「体験したことを繰り返し話したり、遊びの中で表現したりする」(7〜12歳)
- 「自滅的な行動や攻撃的な行動が増し、他者を避けがちになる」(13歳以上)
これらは、災害時などのストレス環境におかれた子どもたちが示す、一般的な反応の一例です。
子どもの支援活動をおこなう国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」の精神保健・心理社会的支援エキスパートの赤坂美幸さんによると、すべての年齢の子どもが、再び同じようなことが起きるのではないかという不安を示し、家族やきょうだいと離れたがらなくなったり、眠れなくなったり、泣いたりといった反応を見せるといいます。
「災害は、衣食住といった子どもにとって安全な空間に必要なサービスを奪い、学校や家庭など大事な人とつながっている感覚を脅かします。特に子どもは一度の経験が強く印象に残るため、睡眠や食事に変化が見られ、ささいなことで泣いたり、なかなか泣き止まなかったりという反応を示します」
赤坂さんは、「こうした反応は、緊急時に子どもが示す自然な反応であるのだと大人が認識することが大切です」と話します。
「緊急時は大人にもストレスがかかります。子どもがいつもと違った反応を示すことが養育者の負担になることがありますが、起こりうる反応だと知っていれば、落ち着いて対応することができるようになります」
親にも支援が必要
身近な大人のメンタルヘルスやアルコールの問題などが子どもを脅かす恐れもあるため、「子どもだけでなく養育者を支えることも必要です」と赤坂さんは指摘します。
「災害時はまず、衣食住を確保することが一番です。そのうえで、子どもの大事なつながりである養育者が落ち着きを取り戻すと、安心安全な居場所が確保されます。子どもはゆっくり自分のペースを取り戻し、回復していきます」
大きなストレスを受けた子どもは、体験した衝撃的な出来事を何度も繰り返し話したり、遊びの中で表現したりすることもありますが、これも一般的な反応だといいます。
「話を聞くときには、子どもの話に集中して、あいづちをうったり、キーワードを復唱したりして、共感を示すことが大切です」
こうした対応は「子どものための心理的応急措置」という方法に基づいています。心理的応急措置は「PFA(Psychological First Aid)」とも呼ばれ、支援者が共通して身につけておくべき心構えや対応として、世界保健機関(WHO)などが2011年にマニュアルをまとめました。
セーブ・ザ・チルドレンは2013年に、PFAを子どもとその保護者、養育者に向けて実施するために「子どものための心理的応急措置(PFA)」をまとめ、これまで支援者ら約1万5000人が研修を受講し、被災地などで実践しています。
相談先を調べておく
「2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件では、つらい出来事を支援者が詳しく聞き出す『心理的ディブリーフィング』という手法が主に使われていましたが、効果がなく、むしろメンタルヘルスを悪化させる恐れがあるという研究結果から、PFAが生まれました」(赤坂さん)
PFAは、まず水や食料、住まいなど基本的なニーズを援助することや、「準備」「見る」「聴く」「つなぐ」の行動原則に沿って進めることで、おしつけがましくないケアや支援を提供することを目的としています。
さらに「子どものためのPFA」は、子どもの年齢に合わせた支援や、子ども特有のリスクやニーズをふまえた支援となっています。
「多くの子どもは順調に回復していきますが、さらなる支援が必要になる子どももいます。普段できていたことができなくなってしまった子や、自分や他者を傷つけるリスクがある子どもは、メンタルヘルスの専門家につなぐ必要があります」
「子どもには大きな反応がなくても、養育する大人のほうに反応が見られることもあります。普段から住んでいる地域で、子どもと親を支える機関や団体を調べておくとよいでしょう」
赤坂さんは相談先の例として、子どもが通っている保育園や幼稚園、スクールカウンセラー、かかりつけ医、児童相談所、精神保健福祉センターなど行政の窓口、SNSなどをあげています。