学童保育に行きたがらない小学生「暇だから早く帰りたい」 共働きの放課後問題、どう対応する?

永野原 梨香

新学期は、学校生活で心配なことが増えたり、さまざまな家庭の子育てに触れる機会が訪れたりする時期。小学生の子育てには、乳幼児期とはまた違った悩みが生まれます。OTEMOTOでは、親子サポートプロジェクト「6歳からのneuvola(ネウボラ)」をスタート。こどもが小学1年生になる保護者が悩みがちなテーマについて、"先輩"や"同期"にあたる保護者たちのリアルな声を紹介していきます。

ひとつの正解はないけれど、みんながどう対処しているのかを知ることで、「うちの子には何が合うのか」を考えるヒントになりますように。今回は「放課後の過ごし方」について考えます。

※ ネウボラ = フィンランド語で「アドバイスの場」という意味。妊娠期から子育て期まで切れ目のないサポートを提供する自治体が日本でも増えています。

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「こどもは放課後どこで過ごしますか?」。アンケートで質問したところ、「学童」との回答が目立ちました。学童(学童保育)とは、共働き世帯のこどもを放課後や夏休みなどの長期休業期間に預かる施設です。

公立学童には、自治体が直接運営している公設公営の施設と、NPO法人や企業に運営を委託している公設民営の施設があります。また、企業やNPOなどが独自に運営する民間のアフタースクール(民間学童)もあります。

公立学童か民間学童か、預かり時間や学童での過ごし方について、アンケートでは親も子も十人十色、それぞれの思いがあるようです。

放課後のこども
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公立学童には友達がいる

児童福祉法に基づいて各自治体が設置している公立学童の多くは、学校や児童館に併設されています。公立学童を選んだ理由には、「誰でも通えるから」「学校の敷地内にあるから」といった利便性や、「友人がいるから」という安心感などが寄せられました。


「共働きで平日はワンオペ。周囲に送迎付きの塾もなく、選択肢は学童のみでした」(30代母親 / 年長男子 / 千葉県)

「学校の近くにあったから。一緒に通うお友達と登室・退室できたので」(30代母親 / 6年生女子 / 東京都)

学校の敷地内にあり、送り迎えがなくて楽。月額2万円弱で午後6時まで見てくれるのは助かる。でも自分がリモートワークだから対応できるものの、通勤必須だったら無理だったかも」(40代母親 / 1年生男子 / 埼玉県)

「夫も私も在宅勤務があり帰宅後に1人になることが少ないため、公立学童で十分。学童から自分で習い事にも行ってくれる」(30代母親 / 1年生女子 / 東京都)

「学校内に学童があり、多くの友達がそこに通うことがわかっていたし、評判もよかった」(30代母親 / 1年生女子 / 東京都)

「民間学童は高く、今後も長く教育費がかかることを考えると、選択肢にはならなかった」(50代母親 / 1年生男子 / 東京都)

民間との「ダブル学童」も

企業などが運営する民間のアフタースクールは、公立学童より費用がかかる傾向がありますが、多種多様なサービスを受けられます。預かり時間の長さや送迎サービス、勉強や習い事を兼ねた利用ができることをメリットに感じている声が寄せられました。


「保育園がバイリンガルだったので継続して英語のみのアフタスクールに行かせている。塾よりもゆるく遊びの要素もあるため、こどもは楽しんでいるよう」(40代父親 / 4年生女子 / 東京都)

「車で自宅まで送ってくれるサービスがあるので選びました」(40代母親 / 年長女子 / 埼玉県)

「公立学童だと、学校の延長でただ過ごしているだけ。仲の良い友達がいれば遊べるが、いないと退屈だし、いてもその子が他の友達と遊んでいることも。放課後を有意義な時間にするために、友達がいてもいなくても楽しく過ごせる民間学童を選んだ」(40代母親 / 3年生女子 / 神奈川県)

”学童落ち”を回避するため、公立学童と英語の民間学童のダブル学童。民間学童は午後8時まで預かってくれ、バスで自宅まで送迎してくれるのでかなり助かった」(40代母親 / 4年生女子 / 東京都)

1年生しか入れない

学童の入所枠が少ないケースや金銭的な理由などから、学童を選ばない人もいました。高学年になってくると一人で自宅で過ごすこどもも増えてくるようです。


最寄りの小学校の学童の枠が少なく、1年生しか入れない。在宅勤務などで対応し、自宅で過ごさせている」(30代母親 / 1年生男子 / 東京都)

「自宅の下に祖父母の会社があり、自分も家にいることが多いので、放課後は帰宅させることに。学童も考えたが、お金やお迎えの問題を払拭できなかった」(30代母親 / 年長女子 / 岐阜県)

「1,2年生は放課後教室。2年生からはほぼ、小学校の部活動が中心。4年生からは自宅に1人でいることも増えた」(40代母親 / 4年生男子 / 東京都)

放課後のこども
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「早く帰らせて」と言われ...

学童に入ることができたから親も子もホッと一安心、というわけにもいかないようです。こどもが嫌がったり行き渋ったりすることもあるからです。


「公立学童に最終の午後6時30分までいてもらっている。ただ、午後5時以降も残る子はかなり少なく、遊ぶ子がいなくなるし、何度も読んだ本をまた読む程度で暇すぎる。今日は早めに帰らせて!と苦しそうに言ってくるので、こちらも心が苦しくなる。とはいえ、仕事を週何日も早退するわけにはいかない」(40代父親 / 2年生男子 / 東京都)

「1年生の頃は週3日が公立学童、週2日が民間学童だったが、人数が多く騒がしいのと、公立学童があまり好きではない本人の意向などで、今年度は週2日は公立学童、週3日は民間学童に変更。12月からは週2日の公立学童も行かなくなり、自宅に帰って一人で過ごしている。3年生にあがると民間学童に通う子も減ると聞いているので、塾に通わせるか検討中」(40代母親 / 2年生男子 / 東京都)

「お勉強系の民間学童に送迎付きで通わせていましたが、家に帰れないストレスからトラブルが続き、2年生でやめてお留守番生活に移行。本人は『学童が本当につらかった』と今も言っており、選択肢があまりなかったとはいえ、とても申し訳ないことをしたなと思っています」(40代母親 / 3年生男子 / 神奈川県)

「高学年になれば通常時は学童に行かなくても大丈夫ですが、やはり長期休みに1人で自宅で過ごすのは健全ではない。なので、多様な活動、コミュニケーションをさせる目的で学童に行ってもらっています」(50代母親 / 5年生女子 / 神奈川県)

検討層の半数「質が不安」

保育・教育施設向けにICTサービスを提供する株式会社コドモンは、放課後のこどもの居場所について困っていること(困っていたこと)について保護者175人にアンケートを実施しました。

「夏休みなどの長期休暇も朝から学童に預けているが、遊びや経験が単調になり、長時間同じ場所にいることが苦痛でないか心配」「学童のスペースが狭い」「子どもが学童に飽きてしまい行きたがらない」などの声がありました。

また、未就学のこどもがいる保護者の51.1%が、学童の利用を検討しているものの、人手不足や施設環境など学童保育の質に不安を感じていることもわかりました。

2023年5月時点で、放課後児童クラブ(学童保育)に入所できていない待機児童は全国に1万6276人。こども家庭庁と文部科学省は2023年12月に公表した「放課後児童対策パッケージ」に、学童運営のための人材と場の確保などを盛り込み、待機児童の解消を目指しています。

こどもの放課後がより楽しい時間になるよう、質の向上も望まれます。

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親子サポートプロジェクト「6歳からのneuvola(6neu)」では、放課後の過ごし方や保護者の働き方のほか、学校行事の分担、携帯電話、おこづかい、ゲーム、勉強場所などのテーマを順次、取り上げています。アンケートは引き続き募集していますので、ご意見やご経験をお寄せください。

また「6neu応援団」として、課題解決をともに考え、親子をサポートする企業や団体を募集しています。詳しくはこちら(contact@o-temoto.com)からお問い合わせください。

著者
永野原 梨香
週刊誌で主に経済記事を担当。現在、フリーライター。関心ごとは暮らしに沿った経済の動き、SDGs、各国の文化や食。
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