チョコレートのフルコース、日本酒とのペアリング。Minimalがつくり出す新しいカカオ体験が生産者を支える
こだわりのチョコレートを使った商品が人気の、Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル ビーントゥバーチョコレート)。カカオ仕入れ時におけるフェアトレード取引など、商品の生産を通し社会課題の解決にも取り組んでいる日本発のチョコレートブランドです。創業者であり代表を務める山下貴嗣さんに、愛してやまないチョコレートの魅力と、Minimalにかける思いについてお話を聞きました。
こだわりのBean to Bar(カカオ豆から製品になるまでを一貫して製造しているチョコレート)が人気を集めている、Minimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル ビーントゥバーチョコレート)。原料となるカカオの生産国は貧困などの問題も抱える国々ですが、児童労働を行なっていない農家からフェアトレード価格以上でカカオを仕入れるなど、創業当時から社会課題の解決にも取り組んでいる日本発のチョコレートブランドです。
東京都渋谷区の富ヶ谷本店をはじめ、都内各所に店舗を構えるMinimalは、2023年12月で9周年を迎えます。
2023年9月には、初となるパティスリー業態のショップを東京都世田谷区の祖師ヶ谷大蔵駅近くにオープン。自慢のチョコレートを使ったパンやケーキ、アシェット・デセールといったスイーツが揃います。
さらに、2023年11月24日には、注目の商業施設である麻布台ヒルズにも新店をオープン予定。代表を務める山下貴嗣さんは、9年前に創業したMinimalの原動力は「ワクワク感」だと話します。
「ものづくりとしての奥深さや、商品の価値をお客様に伝え、実際に楽しんでいただくことなど、日々の新しい発見のすべてがワクワク感につながっています」
「三方よし」の実現
Bean to Barを掲げているMinimalでは、チョコレートの原料となるカカオの調達も重要な事業のひとつ。エシカルなチョコレートの実現のため、フェアトレードでの買い付けを何よりも重視しています。
「フェアトレードは我々のビジネスの根幹のひとつですが、生産者であるカカオ農家を対等なパートナーと捉えている部分が大きいですね。良いカカオを作ってもらっているのだから、正当な対価を支払うのは当たり前。私たちが『救ってあげている』というような意識からではありません。持続可能な取引のために正当な対価を支払い、それによって生産者の生活が豊かになることでさらなる設備投資もでき、結果としてより品質の高いカカオが手に入る。彼らにとっても、私たちにとっても良いサイクルを生むと考えているからなんです」
市場価格よりも高い金額で買い付け、生産者と対等な関係を築いていく。そのためにも欠かせないのは、消費者に良い商品を届けることなのだといいます。
「お客様にその価値を伝え、チョコレートを楽しんでもらい、対価を支払っていただく。そして、私たちはそこで得た利益から少しでも多く生産者に支払う…という『三方よし』のシステムを構築するための起点となるのは、まずはお客様に楽しんでもらい、満足していただける商品を届けることなんです」
常に新しい体験を届けたい
富ヶ谷本店は板チョコレート、代々木上原店はガトーショコラなど、各店舗ごとにメインとなる商品と業態が異なることもMinimalのユニークな特徴のひとつです。
「1店舗1業態というのは効率が悪く、ビジネスでは一番やってはいけない手法(笑)。ですが、お客様に新しい体験を届けるためにも、その土地ごとの特性を生かした店舗が必要です」
この9月にオープンした祖師ヶ谷大蔵店の業態は、チョコレートを使ったスイーツがメインのパティスリー。その出店エリアの選定にも、山下さん独自のこだわりがありました。
「パティスリー業態の出店を考えた際、街に根差し、そこに住んでいる人たちに求められるお店にしたいと考えました。私自身、名物商品を手土産にしたり、スイーツを買って自宅でいただいたりと、住んでいる街のパティスリーを普段から利用しています。祖師ヶ谷大蔵駅周辺は人口が多く、商店街も人の行き来が絶えない活気がある場所。実際に住んでいる人たちに求められるパティスリーとして、Minimalを受け入れてもらえるのでは?という思いがありました」
富ヶ谷本店と同じく、祖師ヶ谷大蔵店も対面コミュニケーションを重視したL字型のカウンター。その姿勢は、パティスリー業態ならではのメニューにも表れています。
「祖師ヶ谷大蔵店でもお客様に新しい体験をお届けしたいと考え、パティシエが目の前で仕上げ、出来立ての味わいを楽しむことができる、アシェット・デセールを提供しています。そのきっかけは、前職でレストランのパティシエをしていたスタッフが、アシェット・デセールを得意としていたから。お客様はもちろん、社内のスタッフとのコミュニケーション、そしてみんなの個性や特技も大切にしています」
「私は『チョコレートはメディアである』と考えています。人にもよりますが、チョコレートが嫌いな人ってあまりいませんよね?それを裏付けるように、何千年も前から人類に愛されてきたという長い歴史があります。チョコレートをさまざまな情報を載せることができるメディアとして捉え、店舗ごとに常にアップデートしていくことによって、新しい体験をお客様にお届けできると考えています」
チョコレートに魅せられて
新店舗となる麻布台ヒルズ店は、各店での体験を凝縮したようなレストラン業態として展開予定。店内のカウンターではチョコレートの"フルコース"を提供し、さまざまなチョコレートの表現のかたちを堪能できるといいます。
「チョコレートとお酒のペアリングも楽しんでもらえるよう、日本各地から取り寄せた日本酒やワイン、焼酎、どぶろくなども用意しています。日本発信のチョコレートブランドとして、その独自の表現を発信する場としても考えているからです」
愛してやまないチョコレートをメディアと考え、その思いを載せ、つなげていくことを大切にしている山下さん。そんな彼にとって、チョコレートとはどのような存在なのでしょうか。
「私にとっては、掘っても掘っても飽きることがない好奇心の源泉のようなもの。そして、絶対に手が届かない高嶺の花のような魅力的な存在でもあります。本当にチョコレートに魅せられているんです」
※Minimalを製造販売する株式会社βaceは、OTEMOTOを運営する株式会社ハリズリーの投資先の一つです。