買って使った「その先」まで見据えて。モノの循環を目指すブランドたち

最所あさみ

日本でも「サステナブル」を意識したブランドが増えていますが、海外ではさらに一歩進んだ取り組みも。アメリカの事例からこれからの消費について考えます。

環境のことを考えて、無駄なものは買わない。いいモノを長く使うことでゴミを減らす。そんな環境を意識した消費行動が、若者を中心に広がりを見せています。

さらに海外では、消費者の意識の高まりから自社のリサイクルプログラムや二次流通システムを作り購入の「その先」まで意識しているブランドも。ショッピングの罪悪感を減らす新しい消費のあり方とは?

100%の循環を目指し、買い物の罪悪感から解放する

アメリカのスニーカーブランド「Thousand Fell(サウザンドフェル)」は「廃棄ゼロ」をミッションに掲げ、アロエやリサイクルされた原料を使い、全てリサイクル可能な素材で作られたスニーカーを販売しているブランドです。

出典:Thousand Fell Official Page

Thousand Fellではリサイクル素材を使った製品開発だけでなく、使い古した製品を回収する独自の回収プログラム「SUPER CIRCLE(スーパーサークル)」も運用しています。

顧客が使い古したThousand Fellの製品はリサイクルされて次の製品へ生まれ変わるのはもちろん、顧客は次の買い物で割引になるクーポンも受け取るお得な仕組みでもあります。リサイクル素材のアイテムを購入し、使い終わった後もリサイクルに回すことができる。

Thousand Fellの取り組みは、ショッピングの罪悪感から私たちを解放するヒントになりそうです。

さらにこの回収プログラム「SUPER CIRCLE」は、Thousand Fellのみならず、他のブランドにも広がりを見せています。

2022年4月末からアメリカのサスティナブルブランド「Reformation(リフォメーション)」が、SUPER CIRCLEの仕組みを使ったリサイクルプログラム「RefRecycling」の運用を開始すると発表しました。

出典:Reformation Official Page

繊維をリサイクルするには一定以上の規模が必要でしたが、Thousand Fellのようなブランドが中心になってリサイクルプログラムのプラットフォームを提供し、そこに参加するブランドが増えることで小規模なブランドもリサイクルの仕組みを取り入れられる動きがアメリカでは注目され始めています。

不要品を自社で回収してユーズド品として販売

循環の取り組みは、リサイクルだけではありません。特にファッションアイテムは、まだ使えるけれど使わなくなったので手放したい人も多いもの。

これまではリサイクルショップやフリマアプリが中古品の二次流通を支えてきましたが、最近ではブランド自ら二次流通を展開するケースも増えています。

それを支えているのが二次流通の運用に特化したスタートアップ「Trove(トローブ)」です。製品の回収からポイントの付与、製品のクリーニング、ユーズド品としてのオンライン販売まで回収のオペレーションを一手に担っています。

出典:Trove Official Page

二次流通もリサイクルプログラムと同様、運用コストが高く専門知識も必要となるため、ブランドが導入するにはハードルの高い取り組みでした。しかしTroveのような二次流通を専門で請け負う企業の登場によって、D2Cブランドの中でも導入する企業が増えています。

日本で展開を始め話題になった「Allbirds(オールバーズ)」も、Troveを利用してリセールプログラム「ReRun(リ・ラン)」を運用しています。

出典:Allbirds ReRun Official Page

Allbirdsの製品はサスティナビリティを重視し、リサイクル可能な天然素材で作られていますが、不要になった製品を捨てる際にはどうしてもゴミが発生してしまいます。そこでひとつの解決策として提供されているのが、不要になった自社製品を回収し新品よりも安い価格で販売するリセールプログラム「ReRun」です。

リセール商品は新品に比べて3割ほど安い価格で購入できるため、これまでは高くて手が出せなかった層にも商品を届けることができます。環境に配慮した商品は割高に感じられることも多いですが、リセールを通して価格の問題も解決しています。

さらに日本でもおなじみの「Patagonia(パタゴニア)」も、Troveを通してリセールを行うブランドのひとつ。公式リセールサイトとして「Worn Wear(ウォーンウェア)」を運営し、製品を回収した際には次回の買い物で使えるポイントも付与しています。

「Worn Wear」の取り組みは、日本ではまだのリセールの仕組みは導入されておらず、リペア(修理)の案内のみとなっている。
出典:Worn Wear Official Page

こちらも3割引から半額のお得な価格で製品を購入することができ、ブランドが公式で運営しているからこその安心感もあります。

残念ながら日本ではまだリセールの仕組みはありませんが、日本版のサイト上でも「Worn Wear」の名前で修理サービスやお手入れガイドを提供しており、製品を購入したあとのケアにも力を入れていることがわかります。

日本でも「回収」への取り組みは増加

循環を意識したブランドの取り組みは、日本でも大手企業を中心にはじまっています。私達の生活にもっとも身近なユニクロでは、各店舗に設置されたRE.UNIQLO回収ボックスを通して洗濯済みの不要になった衣料品を回収し、難民キャンプや被災地への緊急災害支援としてリユースしたり燃料やリサイクル素材として活用する取り組みを行っています。

さらに一歩進んだ取り組みを行っているのがアウトドアブランドの「Snow Peak(スノーピーク)」です。「服から服へ。テントから服へ」を掲げ、リサイクル衣料の回収から再度商品化し、販売するところまでを日本環境設計と共にリサイクルプログラムとして提供しています。

出典:Snow Peak ReCYCLE Project Official Page

衣料品はもちろんのこと、テントやタープといったアウトドアアイテムも対象としており、スノーピーク以外の製品も回収しているのが特徴です。回収の際にはオリジナルステッカーがもらえる嬉しい特典も。アウトドアを通して自然と触れ合う機会を提供し、自然の恩恵を受けているブランドだからこそサスティナビリティへの取り組みも一歩先んじているのかもしれません。

アメリカの事例に比べると日本ではまだ循環の仕組みは遅れをとっていますが、SUPER CIRCLEやTroveのようにリサイクルや二次流通の仕組みをまるっと請け負う企業が生まれれば、D2Cをはじめとする小規模なブランドの導入も増えていくかもしれません。さらに消費者にとっても、クーポンや次回使えるポイントといったお得なサービスも付与されれば、積極的に利用する動機になりそうです。

そして何より消費者である私たち一人ひとりが消費行動を見直し、リサイクルやリユースに積極的に取り組むブランドを見つけ支持することで、消費のあり方も徐々に変化していくのではないでしょうか。

(情報提供:沼田 雄二朗)
(サムネイル画像:Adobe Stock / jchizhe)

著者
最所あさみ
リテール・フューチャリスト/ 大手百貨店入社後、ベンチャー企業を経て2017年独立し、「消費と文化」をテーマに情報発信やコミュニティ運営を行う。OTEMOTOでは「職人の手もと」連載を中心に、ものづくりやこれからのお店のあり方などを中心に取材・執筆。
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