全国から同世代が集まる「部室」がメタバース空間に登場。性的マイノリティのこどもを孤立させない

小林明子

「性的マイノリティであることを誰にも相談できない」と悩む若者やこどもが孤立しないように、メタバース空間で居場所をつくる取り組みが始まります。地方で暮らす若者も物理的な負担なく参加でき、アバターを通してなりたい姿になれるのもメタバースならではです。

これは「LGBTやLGBTかもしれない若者やこどもの居場所づくり」に取り組む一般社団法人にじーずが始める、メタバース空間での居場所事業「バーチャルにじーず」。代表の遠藤まめたさんによると、性的マイノリティの若者を対象にしたバーチャルな居場所は、国内外で前例が確認できなかったということです。

メタバース空間の居場所「バーチャルにじーず」
画像提供:にじーず / OTEMOTO編集

交通手段がない地方の若者に

にじーずは2016年8月から、全国の約10都市でリアルな居場所事業をしています。2023年12月までに10代から23歳まで延べ3500人あまりが参加しました。

多くは、身近に性的マイノリティの当事者がいないという若者たち。自分以外の当事者に会ったことがないこどもや、家族にカミングアウトしていない人もいます。学校で「体育の着替えで困る」「制服を着るのが苦痛」といった悩みを抱えていても、「我慢するしか選択肢がなく、変えるという発想すらないこどもも多い」と遠藤さんは言います。

このため居場所事業は、同年代の当事者と出会うことで困りごとの解決の糸口を見つけられるように、また積極的に会話をしなくても安心して過ごせる場所になるように、なるべく定期的に複数回、開催しています。

しかし、特に地方では、居場所までの交通費が高くついたり、保護者に車で送迎してもらうしか交通手段がなかったりして、若者の参加が難しいという問題がありました。

もともとVRが好きだった遠藤さんは、立地性を問わないメタバースの可能性を模索していました。悪性骨腫瘍で長期入院する患者同士が交流できるメタバース空間をすでに構築していた岡山大学学術研究院医歯薬学域准教授の長谷井嬢さんの協力のもと、安全で心地よい空間づくりを検討し、実現させました。

バーチャルにじーず
「バーチャルにじーず」では、好きなアバターの姿で思い思いに過ごすことができる
画像提供:にじーず(サムネイルも)

声を出さずに話せる

「バーチャルにじーず」は、メタバースプラットフォーム「cluster」のアプリを利用し、PCやスマホから無料で参加することができます。利用者は好きなアバターを設定し、匿名で参加。公開チャットで他の参加者と会話したり、ボタン一つで表情やポーズを変えたりすることができます。

「服装や髪型を自由にカスタマイズできるので、普段なりたいと思っていてもなれない姿で参加することができます。声にコンプレックスがある人もチャットでは話しやすいというメリットもあります」(遠藤さん)

バーチャルにじーず
運営スタッフが猫のアバターで受付をし、参加者をサポートする
画像提供:にじーず

運営側で事前に年齢確認をし、参加者同士がクローズドには交流できないような安全対策をとっています。運営スタッフが猫のアバターで入り、参加者をサポート。実際の居場所ではスタッフは大人で参加者はこどもですが、メタバースではスタッフが参加者よりも小さい姿だという点も設計でこだわったポイントです。

バーチャルにじーず
好きなポーズや表情で記念撮影
画像提供:にじーず

花火やダーツも

また、メタバース上では現実と違って空間づくりにコストがかかりません。トライアルを経て、部屋の死角をなるべくなくしたり、大きな水槽を置いたり、参加者が遊べるオセロやダーツを設置したりして、居心地のよい部屋に改良していきました。

トライアルに参加した若者たちは、一緒に花火やダーツに挑戦したり、ギャルピースのポーズを選んで記念写真を撮ったりと、ゲーム感覚で楽しんでいました。

バーチャルにじーず
オセロやダーツのほか、パンやコーヒーを楽しむこともできる
画像提供:にじーず

「もともとの居場所事業も、シリアスな話をするよりは、雑談を通してゆるゆるとつながり、孤立感を解消する場所でした。メタバースではそれに加え、若者が楽しめるコンテンツを提供していけそうです」

「いずれは部室のように、のぞいたら誰かがいて、思い思いに好きなことをして過ごせるような空間を共有していきたい。全国どこにいても、ひとりぼっちではないと感じてもらえたら」(遠藤さん)

「バーチャルにじーず」は、全国の13〜23歳を対象に、当面は不定期で開催。いずれは月1回の定期開催を目指していくとのことです。初回は2024年1月25日午後8時〜9時半。詳細はこちら

My Pride Color
OTEMOTO
著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
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