紙を折る練習をしてみよう。1年生に小さな自信をつける「小学生になったらえほん」がすごい

小林明子

小学校ってどんな場所? 何を勉強するの? 入学を控えたこどもたちが学校生活をリアルに想像できる『小学生になったらえほん』(ポプラ社)。実際に公立小学校に取材した内容をもとにつくられています。

小学生になったらえほん
小学生になったらえほん』(ポプラ社)
Akiko Kobayashi / OTEMOTO

『小学生になったらえほん』は、まだひらがなが読めないこどもでも、イラストや写真によって小学校のリアルな様子がわかるように工夫されており、親子で一緒に読める入学準備の絵本です。

1年生の1日のスケジュールやランドセルの中身、給食の様子など、こどもはワクワクし、大人は懐かしさを感じるような情報が詰まっています。

小学生になったらえほん
出典:『小学生になったらえほん』(ポプラ社)

公立小学校のリアル

入学前のこどもにとっては、教室の中は未知の世界。学級担任の先生がいて、それぞれの机と椅子があって、黒板があって、ロッカーに教科書やランドセルを入れて......そんな教室の様子が、一目でわかります。

実際に公立小学校で撮影し、先生たちに取材した情報がベースになっています。

小学生になったらえほん
出典:『小学生になったらえほん』(ポプラ社)

また、机の中に入れる道具箱の中身も写真で紹介。クレヨンや算数セットなどがきれいに並べられている写真は、こどもが整理整頓をするときの参考になりそうです。

小学生になったらえほん
出典:『小学生になったらえほん』(ポプラ社)

放課後は、「学童保育」「友達と遊ぶ」「習い事」の3種類の過ごし方を紹介しています。

両親の働き方によっては、学校から直接自宅に帰る子ばかりではありません。放課後はさまざまな過ごし方があるという情報が自然と頭に入ってきます。

小学生になったらえほん
出典:『小学生になったらえほん』(ポプラ社)

タブレット学習が登場

1年生になると、勉強や宿題を初めて経験します。計算ノートの使い方や、「音読(声を出して教科書を読み、保護者のサインをもらう宿題)」など、入学するまではイメージしづらい学習の内容も写真で伝えています。

担当編集者の富川いず美さんによると、もともと2018年に、入学前後に役に立つ情報を網羅した大ボリュームの『小学生になったら図鑑』を発行していました。『小学生になったらえほん』は、この『図鑑』の内容をもとに、特に入学前に必要な情報をピックアップしています。

『図鑑』の発行から数年の間に小学校生活には変化があったため、『絵本』では変更した部分もあります。

例えば、コロナ禍以降は、机を向かい合わせることなく、前を向いて給食を食べるようになった学校が増えました。小学校でもタブレット学習が普及したり、熱中症対策の重要性に注目が集まったりしたことから、新しい情報やイラストを盛り込みました。

読者からは「これからのことをよく話し合うきっかけになった」「ただ言葉だけの話では不安を拭えなかったが、この絵本を見ると小学校のことについて伝えやすくなった」などの声が届いているそうです。

保護者のほうが不安

富川さんはこう話します。

「保護者の方のほうが、お子さんよりもむしろ不安なのだなと感じました。お子さんが抱えているのは、『小学校のことがよくわからない』不安ですが、保護者の方々は小学校の様子がよくわかっているぶん、余計に『うちの子はうまく振る舞えるのか?』と不安になるのだと思います」

「そんな保護者の方々が、小学校のことがまだうまく想像できていないお子さんに、小学校の様子や、そこで気を付けなくてはいけないルールを教えたり、そのために準備しておくべきことを伝えたりするために、指針となる本があると役に立つはずだと思いながら編集しました」

小学生になったらえほん
出典:『小学生になったらえほん』(ポプラ社)

読み書きや計算よりも

『絵本』で新たに設けた「入学前にやってみよう!20」の章では、「ランドセルをせおってあるいてみよう!」「かみをきれいにおろう!」など、こどもが遊び感覚でチャレンジしたいと思うようなことがピックアップされています。

「文字の読み書きや計算などお勉強の項目は、あえて入れませんでした」と富川さん。

『図鑑』や『絵本』をつくるにあたって公立小学校の先生たちに話を聞いたとき、「勉強に向かうための基礎的な力や、生活力でつまずかないことが、自信を持って楽しく小学校生活のスタートを切るために大切」と言っていたことが心に残っていたからだといいます。

「例えば、配られたプリントをスムーズに折れる、体育の着替えが時間内にできる、ちょっとした我慢ができる、といったようなことです」

「先取りで学習しようと思えばきりがないですが、それよりは、小学校での学習にスムーズに入っていけるような"基礎力"を身につけることに重点を置いています。また、保護者の方だけでなくお子さんが読むことを想定した本ですので、『おもしろそう』『できそう』と思ってもらえるような内容、レベル感にもこだわりました」

監修をつとめた初等教育研究会常務理事の長谷川康男さんは、このようにコメントしています。

「この絵本を開くと、お子さんは親しみやすいキャラクターと一緒になって、小学校を探検したり、小学校生活を想像してみたりして、ぼくもわたしも小学生になれそうだと安心するでしょう」

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OTEMOTO

新学期は、学校生活で心配なことが増えたり、さまざまな家庭の子育てに触れる機会が訪れたりする時期。小学生の子育てには、乳幼児期とはまた違った悩みが生まれます。

OTEMOTOでは、親子サポートプロジェクト「6歳からのneuvola(ネウボラ)」をスタート。こどもが小学1年生になる保護者が悩みがちなテーマについて、"先輩"や"同期"にあたる保護者たちのリアルな声をアンケートで募り紹介しています。

また「6neu応援団」として、課題解決をともに考え、親子をサポートする企業や団体を募集しています。詳しくはこちら(contact@o-temoto.com)からお問い合わせください。

著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
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