寒くてもタイツ禁止のままですか?「ブラック校則」により防寒できない子どもたち

小林明子

寒さが厳しくなる季節。しかし、学校に通う子どもたちは、校則や制服の着用ルールによって寒さ対策を制限されている場合があります。子どもの健康と安全のため、気候や体調に合わせた柔軟な対応が急務です。

気象庁によると、2023年1月24日から冷え込みが強まり、26日にかけて東日本の広い範囲で大雪になることが予想されます。東京都心などでも氷点下になるなど記録的な寒さとなる見通しです。

水道管の凍結や猛吹雪による車の立ち往生など、生活インフラにも関わるほどの影響が予想される中、学校に通う子どもたちには適切な注意喚起がされているでしょうか。休校の対応や登下校時の注意だけでなく、防寒についても服装のルールを緩和するような柔軟な対応が求められます。

大寒波イメージ
2018年2月17日、岩手県
Adobe Stock / eariewboo

長袖禁止のルール

OTEMOTOが継続して実施中のアンケート「学校のこれから」で学校の理不尽なルールについて聞いたところ、冬に寒さ対策が制限されていたという声が多く寄せられました。

中には、子どもの体調や健康に影響を及ぼす恐れがあるルールもみられます。

「高校のマラソン大会では、必ず半袖短パンでなければいけませんでした。たしか2月ごろの雪が降るとっても寒い日に行われ、長袖長ズボンのジャージがあるにも関わらず、着用禁止。意味不明すぎて、本当に嫌でたまりませんでした」(30代女性)

「福岡の県立高校でしたが、1年生の冬は『朝課外』の前に『寒中鍛錬』という行事があり、まだ暗い中を寒空のもと走らされました。その後は体調が悪く、とても授業を受けられる状態ではなくなってしまうので、本当にやめてほしかった。せめて自由参加にしてほしかったです」(30代)

「中学校で冬場の体育のとき、ジャージの上か下どちらかのみ着用可というルールがあり、今思うと異常でした」(40代女性)

現役の学生が困っている

これらは決して過去の話ばかりというわけではありません。娘が現在、公立小学校に通っているという40代の母親は、いまでも同様のルールがあると話します。

「指定の体操着は半袖短パンのみで、冬に体操着の上に羽織ってもいいのは上着のみ。下半身は夏と同じ短パンで、なぜかニーハイソックスも禁止されているため、体育がある日はとても嫌がります」

子どもに関わるNPO団体などが発足させた「ブラック校則をなくそう!プロジェクトチーム」は2018年、いわゆる「ブラック校則」や不適切な指導について調査を実施しました。

10代(15歳以上)〜50代の計2000人に、中学と高校でどのような校則を経験したかを聞いたうち、「冬でも、ストッキングやタイツ、マフラーなどの防寒対策をしてはいけない」といった防寒を制限する校則についても尋ねました。

このような防寒を制限する校則を「中学校で経験した」と答えた10代は7.59%、「高校で経験した」と答えた10代は3.16%おり、いずれも20代以上の回答よりも高い割合となりました。

「気候変動もあるのに」

「子どもは風の子」と言われていた時代もありましたが、いまだに校則やルールが優先され、気象や環境、子どもの体調に応じた配慮がされているとはいえない学校があります。

OTEMOTOのアンケートに回答した40代の女性は、こう訴えます。

「気候変動もあり、昔と同じとは言えないので、衣替えと関係なく気候に合わせて冬服でも夏服でも臨機応変に替えてよいことにしてほしい。エアコンなども積極的に使用し、快適な環境で学習できるようにしてほしいです」

50代の女性は、娘が体調を崩し、高校を中退することになってしまったと訴えます。

「寒くて底冷えする体育館の床に直接、長時間にわたって座らせたりするんです。娘が体調を崩しても先生はとりあってくれませんでした。学校は避難所にもなるのだから、冷暖房などの快適性はもっときちんと工夫すべきではないでしょうか」

「自分の学生時代を思い返しても、中学校のセーラー服はとにかく寒かったです。首元もお腹も開いてるから寒くて寒くて。それなのにコートを着ちゃダメとか意味の分からない校則がありました。生理が始まってまだ安定していない時期に、あれだけ寒さを我慢させるのは虐待と言っていいと思います」

スカートの下は生足

そもそも制服そのものが防寒などの機能性が重視されていないのではという声もありました。

「制服がブランドのデザインだったので、高いうえに寒かったです。生徒の声では変更ができず、生徒の主体性が生かされていませんでした」(20代女性)

「東北で、ほとんどの生徒が徒歩か自転車で登校する高校に通っていました。制服のスカートの下にジャージをはくことが禁止されていて、寒いし自転車だとパンツが見えるしで大変でした。どうしても下に何かをはくのがだめと言うなら、ジャージ登校を許してほしかったです。明らかに、雪の中を生足で自転車登校する生徒のことを考えていない決まりで、いま考えると拷問に近い」(30代女性)

「息子は都立高校に通っていますが、制服の下に着てもいいのは、学校指定の刺繍入りの紺色ベストかカーディガンのみ。長いシーズン着させるためなのか薄い生地で寒さ対策になりません。中学生のときに着ていたグレーのウールのベストでもよいだろう、と着せたら先生に注意されました」(40代女性)

「指定コート以外の防寒着とタイツが禁止されていました。今では考えられないです。あの格好で冬に通学させるなんて酷いなと思います」(50代女性)

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毛布の持ち込み不可

「タイツをはかせてほしかった。ストッキングは着用可能でしたが、ストッキングでは到底寒さに耐えられません」(20代女性)

ストッキングはOKなのにタイツはNGという校則がいまなお残る学校もありますが、ここ数年の「ブラック校則」の改善の動きによって廃止されたり、生徒からの要望でタイツが許可されたりした事例も全国各地であります。

「中学生の頃、冬になってもタイツがはけませんでした。肌色のストッキングは良かったが、黒色のタイツは校則で禁止されていました。現在、その中学校に通っている生徒にはタイツをはいている子もいるため校則が変わったのだと思いますが、なぜ当時もタイツをはけるような校則ではなかったのか疑問です」(10代女性)

校則の中でも防寒に関するものは、子どもの体調や健康に大きく影響します。学校での体調不良は、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症の拡大にもつながりかねません。

「寒さ暑さには個人差もあるので、規則がある中でも服装はフレキシブルに対応できるようにしてほしい。規則はこうだけど、こういう場合はこうしてもいいよ、とすべての教員に認めてもらえるといいと思います。あの先生はいいと言ったのに、この先生はダメということが多すぎます」(40代女性)

20代の女性は公立中学に通っていたとき、教室に空調が整備されていなかったにも関わらず、寒さ対策をすることが許されなかったといいます。子どもは声をあげづらいため、保護者にも声をあげてほしい、と話します。

「登校時に制服の上に着るカーディガンは校内では脱ぐようにという規則があり、どれだけ寒くても防寒ができませんでした。もちろん、ブランケットなども持ち込み禁止。学ぶ場だと言うならば、学ぶ側が快適に取り組めるよう、せめて個人が用意したいものについては許容してほしいです」

「生徒が意見しても反抗的だと一方的に決めつけられたため、生徒だけが発言しても無意味でした。せめて保護者がもっと意見してほしいと思いました」

気象庁も呼びかけている強烈寒波への備えは、緊急性の高い深刻な事態です。たとえ校則やルールをすぐには変えられなくても、各学校や教師が柔軟に対応したり、家庭から率先して対策を訴えたりすることが、子どもたちの健康を守ることにつながります。

※アンケートの性別表記は任意で記入があった場合のみ記載しています

著者
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。
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