「結婚しないの?」「こどもは?」帰省が憂鬱。"親ハラ"の返し方を聞いてみた
帰省シーズンになると憂鬱になってしまう。家族のことが嫌いなわけじゃないのに、長く一緒にいると気詰まりになるーー。OTEMOTOが実施したアンケートには、親の悪気のない一言が、実家での居心地の悪さにつながっているという声がありました。
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東海地方の大学院に通う22歳の女性は、実家に帰省するたびに祖母や母から、結婚や仕事のことについて尋ねられます。
80代の祖母が語るのはいつも「幸福」の話です。結婚して子どもを産むことが女性の幸せ。公務員や大企業など権威のある仕事につくことが幸せ。
離婚経験のある50代の母でさえ、「一生に一度は結婚して子どもを産むのがいい」と勧めてきます。
「大企業なんてとても無理。仕事も決まっていないのに、そのうえ結婚や出産を考える余裕なんて......」
祖母や母にそう反論したとしても、「でも、いつかは結婚するよね」といった感じで同じ話が繰り返されるため、女性は曖昧に返事をして話が終わるのを待つようになりました。
大企業に入社しさえすれば安泰だった時代はとっくに過ぎ、結婚を選ばない生き方も当たり前になっています。それでも祖母が言う「幸福」はずっと変わらないのです。
毎晩、実家に電話
女性は幼い頃に両親が離婚し、わざわざ遠方から引っ越してきてくれた祖母と、一家の大黒柱となった母親に育てられました。
「忙しい中で愛情をかけて面倒をみてくれたので、感謝していますし、2人のことはとても大事です」
ただ、家庭の方針は「子どもは親に従うのが当たり前」というもので、「言ってもわからないから」と叩かれたことも何度もありました。習い事を自分の意志で始めたりやめたりもできませんでした。
自分のことは自分で決めたいと思い、進学を機に実家を出てひとり暮らしをすることにしました。そして、家族が頻繁に来られなさそうな遠方の進学先を選びました。
それでも女性は毎晩、実家に電話をしています。家にずっとひとりでいることが多い祖母の話し相手をするためです。
「実は電話は苦手なんですが、やめるのがとても良くないことのように思えてしまい、続けています。祖母や母が喜びそうなことをする習慣が抜けていないからかもしれません」
長期休暇になると半月ほど実家で過ごしており、この夏も帰省する予定です。高齢の祖母には会えるうちに会って孝行したい一方で、「また結婚や就職の話をされたら、かみ合わないんだろうな」と憂鬱になってしまうといいます。
「いつ戻ってくるの?」
久しぶりの帰省は楽しみなはずなのに、同時に憂鬱になってしまうのはなぜなのでしょうか。
OTEMOTOが実施したアンケートには、親や親戚からかけられる言葉が、帰省の心理的な負担になっているという声が多く寄せられました。
東京都で暮らす40代の女性は、共働きで子育てをしています。関西の夫の実家に行くたび、義理の両親から「いつ戻ってくるのか」と言われます。
「義理の両親は『男は生まれ育ったところに戻ってくるのが幸せ』だと思っているようで、私の仕事のことや生活環境が変わることをちっとも考えていないのがつらいです」
「家族で大阪に引っ越したところで、距離が縮まるだけで心の距離は開いたままなんじゃないかなと思います」
子どもがほしい"演技"
普段は近くにいないからこそ、価値観の違いが際立ってしまうのが帰省のタイミング。プライベートなことに踏み込んでも構わないと思っている親世代に対し、触れてほしくないと思っている子世代は返答に苦労しています。
「葬儀で久しぶりに会った親戚から、結婚したら子どもがいて当然のように言われ、あまつさえ子どもがいると決めつけられて非常に不快な思いをした。いろいろ言われたくないため、子どもが欲しいわけでもないし子どもがいない人生も悪くないと思っているのに、ほしかったのにできなかった演技をせざるを得ず、もやもやした」(40代女性)
「帰省すると家族に限らず、親戚や近所の人にまで『子どもは?』と悪気なく言われる。『まだ(いません)』と答えると『早いほうがいいよ』『産めないの?』などと話が膨らんでしまうので、『え?どうしてですか?』と答えると変人のような扱いを受ける。子どもを持つつもりはないが、それを言うと非人間扱いされるので親にすら絶対に言わなかった」(30代女性)
子どものために反論する
職場であれば「セクシュアル・ハラスメント」にあたるような言動でも、親子や親戚という関係性だからこそ指摘しづらいことがあります。このため「親ハラ」という言葉も生まれています。
親にとっては子どもが何歳になっても子育ての延長で、「あなたのためを思って」と悪気はなく話しかけていることもあり、アンケートでは「反論しても仕方ないからスルーする」「あたりさわりのない会話以外はしない」など、コミュニケーションを放棄するという人も少なくありませんでした。
「親との話が苦痛になったので、娘を『渉外係』に任命し、お小遣いを増額しました。同じことを連絡しても、孫からだと親は喜ぶので」(50代男性)
ただ、ときには見逃せない場合もあります。親世代の価値観に子どもが影響されることを懸念しているという声も。
「九州にある実家は、母が父の身の回りのことをなんでもお世話し『男を立てる』ことを正義だと思っているので、子どもの悪い見本になります。食事の場で特にそうなるので、そういう姿を見せないようにしようとすると、食事を共にしない選択肢となります」(30代)
「子どもに父権社会的な考えを押し付けようとしてきたら、『それは封建的』『前時代的』『最新のエビデンスではね』とカットインしています。いろいろな考え方があることに子どもが気づけばいい。親が納得しなくても気にしません」(40代女性)
親の老いを目の当たりに
また、アンケートでは、実家に帰ると親の老いに直面せざるを得ないという意見もありました。
「義親が部屋の汚さに慣れてしまっているようで、その違和感が年々きつくなっている」(40代女性)
「記憶にあったよりも親が歳をとっていて、何か説明するときも理解に時間がかかる。昔は突発的に怒ったりしていた母は今は勢いがないので助かりますが、こちらも昔ほど元気がないので長時間顔を合わせるのは避けたいです」(30代女性)
「介護、価値のない土地、増える空き家、お墓にお仏壇、目減りする愛情......。地方に残した親や親戚と決して良い関係性ではない状態で、これからのしかかってくる問題とどう向き合っていったらいいのか。 もう、帰省のたびに憂鬱しかないです」(30代女性)
嫌な思いをすることはわかっているけれど、かといって切り捨てることもできない。それが帰省の憂鬱につながっている人もいるようです。
(アンケートの回答は一部編集しています。回答者の属性は記入があった方のみ記載しています)