「あなたは何にでもなれる」キッザニアで"無意識の思い込み"から自由になる
無意識のうちに判断や行動に影響を与える「アンコンシャス・バイアス」は、過去の経験によって形成されるもの。こどもたちが思い込みにとらわれることなく夢や目標に挑戦できるよう、幼いうちからその概念を教える取り組みがおこなわれています。
こどもの職業・社会体験施設「キッザニア東京」で、2025年10月31日から1週間、こどもたちが無意識の思い込みについて考える「アンコンシャス・バイアス ウィーク」が開かれました。
大人の思い込みがこどもに影響

Akiko Kobayashi / OTEMOTO
「アンコンシャス・バイアス」とは、何かを見たり聞いたりしたときに、無意識に「こうだ」「こうでなければならない」と思い込んでしまうこと。過去の経験や社会環境から形成され、誰にでもあるものです。
東京都が2022年度、都内の公立小学5、6年生と保護者、教員を対象に、性別による無意識の思い込みの実態調査を実施したところ、
「男の子だから、女の子だからと思うことがある」(男子41.7%、女子41.0%)
出典:性別による無意識の思い込みの実態調査
「性別で教科の得意、不得意があると思う」(男子40.1%、女子35.0%)
「性別で向いている仕事と向いていない仕事があると思う」(男子46.8%、女子39.8%)
という結果となりました。
また、先生や保護者など周りの大人から「男の子だから、女の子だから」と言われた経験がある児童のほうが、性別に対する意識に影響があることもわかりました。
こうした無意識の「思い込み」や「決めつけ」にとらわれることなく夢や可能性にチャレンジし、進路や職業を選択できるよう、キッザニア東京では東京都の協力のもと、このワークショップを2023年から開催しています。

出典:広報東京都こども版(2023年1月号)
東京都生活文化局女性活躍推進担当課長の森口浩二さんは、ワークショップのねらいについてこう語ります。
「年齢や経験を重ねると無意識の思い込みは増えていくので、アンコンシャス・バイアスという概念があることを小学生のうちから知ってもらい、こどもたちの選択の幅を狭めないようにしたい。周りの大人の影響も少なからずあるため、親も一緒に考えてもらうような工夫もしています」
0人だった女性運転士

ワークショップではまずスタッフが、実生活でのアンコンシャス・バイアスの事例を挙げます。
「ナスって何色だと思う?」
「紫色〜!」
「なぜ紫色だと思う?」
「いつも見ているから」
「実は、白いナスもあるんだよ」
こんなやりとりを通して、これまでに見たことや経験したことが思考に影響していることを実感していきます。
次に、職業のアンコンシャス・バイアスを意識するような質問を投げかけます。
「新幹線の運転士に、女性はどのくらいいると思う?」
東海道新幹線では、2003年に女性運転士が誕生。2002年に0人だった女性運転士が、2004年に4人、2023年には80人になっている事実を紹介しました。
「女の子の友達が『新幹線の運転士になりたい』と言ったらなんて声をかける?」
「いいじゃん!って言う」
「応援する!」
夢は工場長

また、性別による「決めつけ」だけでなく、テストで100点を取ったり、サッカーの大会で優勝したりすることを例に、「はじめる前から『できない』と思ってしまうのはなんでだろう?」と問いかけます。
「決めつけは相手を傷つけることもあるんだよ」「まずは自分の可能性を信じてみよう」。スタッフが声をかけると、最初は夢を語ることを躊躇していたこどもたちの口数が次第に増えていきました。

ワークショップは、こどもたちが「チャレンジカード」に夢を書くことで締めくくります。「おもちゃ工場の工場長になりたい」「バスケの試合でうまくなりたい」など、思い思いの「なりたい自分」を書いて壁に貼り、カードにして持ち帰りました。
ワークショップに参加した小学6年生の一人は「アンコンシャス・バイアスについて初めて知りました。自分にはできないと思い込まず、いろいろな人を救える看護師になりたいという夢を書きました」と語りました。
