ランドセルの色に迷ったら「きょうだいシェア」 赤と黒どっちも選べる小学1年生
赤と黒のランドセルを肩にかけてポーズをキメているのは、小学1年生のイズモさん。これ、どちらもイズモさんがふだん使っているランドセルです。イズモさんは2人の姉と、赤と黒のランドセルを共用しているのです。
赤と黒を気分で使い分ける
「きょうだい3人、好きなときに、赤黒どちらか好きなほうのランドセルを背負っていいことにしているんです」
母親のルミコ・ハーモニーさんによると、入学前、イズモさんが赤いランドセルに興味を示したのが、きょうだいでランドセルを共用することを決めたきっかけでした。
保育園の頃から赤色が好きで、ファッションへのこだわりも強かったイズモさんが「赤いランドセルがいい」と言い出すのは、想定内ではあったといいます。
長女と次女の通う小学校は、ランドセルの色は赤か黒と指定されていたため、すでに姉2人は赤色のランドセルを持っていました。3つ目も、赤色のランドセルを買うかどうか......。
「イズモの決心が固いことはわかっていましたが、入学してすぐに『男の子なのに赤なの?』とか『女の子みたい』などとからかわれるかもしれない、と少し心配してしまったんです」
色で迷っていたときに、次女がこう言いました。
「私、実は黒がよかったんだよね」
誰にもからかわれなかった
長女と次女の小学校は、赤か黒という指定はあったものの、性別による色の指定まではされていませんでした。
3つ目を黒色にしたら、3人とも赤と黒の両方の色のランドセルを使うことができるのではーー。悩ましかったランドセルの色選びに光明が差した瞬間でした。
「女子は赤、男子は黒という暗黙のルールに一石を投じるという意味でも、次女が黒を持っていくのもいいんじゃないかと思い、赤と黒を共用することにしたんです」
晴れて、赤いランドセルで入学式を迎えたイズモさん。赤いブローチ付きのスーツ、ダイヤル付きのシューズも、すべて自分でコーディネートしたスタイルです。
いま、きょうだいは好みや気分に合わせて、赤と黒のランドセルを「適当」に譲り合って使うことを楽しんでいます。けんかになることはありませんが、中身を入れ替えないまま間違えて学校に持っていってしまうハプニングも。当初ルミコさんが心配していたような周りの反応は、子どもからも大人からも、まったくなかったそうです。
選べる自由は幸せに直結する
関西地方で生まれ育ったルミコさんは幼い頃、親に言われるがままに週5日、習い事に通っていました。放課後に自由に遊んだ記憶はなく、進学や就職でも自分の意見をあまり聞いてもらえなかったことを、今でも苦々しく思い出すそうです。
結婚した夫はフィンランド出身。子どもを自立したひとりの人間として尊重し、ささいなことでもまず子どもの意見を聞こうとします。そんな夫の子どもへの接し方を見ていて、ルミコさんは「選べる自由は、幸せに直結するのでは」と実感したといいます。
「無理やりやらせてもいいことなんてありません。親は情報や選択肢を用意し、子どもが選ぶ。持ち物や習い事、休日の過ごし方、夕食のメニューなど、何でも子どもの意見を聴くように心がけています」
とはいえ、実践するのは簡単ではありません。ときには忍耐も必要です。
休日の過ごし方がきょうだいでバラバラになってしまったり、炊いたごはんを使い切りたかったのに「パスタがいい」と言われたり。子どもの要望を受け入れるのが難しいときは、対等な目線に立って事情を説明するようにしているそうです。ルミコさんはこう話します。
「どんな小さなことでも、自分で決めたことを大人に受け入れてもらえると、一つの成功体験となります。責任をもってやり遂げる自覚も持てるようです。この一歩一歩が、人生で大切なことを主体的に選び取っていく力につながるのではないでしょうか」
雨が降ったある日。黒いランドセルにイズモさんが合わせた装いは、赤ちゃんの頃に着ていた着物。ファッショニスタの勢いはとどまることを知らず、大人たちの心配や迷いなんて吹き飛ばしています。
学校のこれから
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