いまさら聞けない。台風について誤解していた3つのこと
台風のシーズンが近づいてくると、天気予報とにらめっこしながら、「お出かけの予定は大丈夫かな?」「食糧などの備蓄をしておいたほうがいいのかな」などとソワソワしてしまいますよね。実は台風には誤解されがちなポイントがいくつかあります。防災のためにも、正しく理解しておきたいもの。気象予報士が解説します。
1. 台風は日ごとに巨大化する←誤解
台風が日本付近に接近すると、テレビなどでさかんに進路予報が表示されるようになります。
これを見て、台風は日ごとに大きくなると思っている人は少なくないはずです。
しかしそれは、誤解です。
この、台風の進路予報にある円は「予報円」と呼ばれるもので、中心がこの円の中に入る確率が70%以上です。天気予報は先の予報ほど不確実になり、予想される進路にもばらつきが出てきます。ですから、台風が今後進むかもしれない範囲がだんだん広がり、予報円も大きくなっていくのです。
予報円に入るのは「台風の中心」であって、台風全体ではありません。台風は、中心から半径数百キロの範囲は雨や風の影響を受けるので、円から離れた場所でも油断できません。ちなみに、半径500km以上の大型の台風というのは、風速15m/sの範囲が本州がすっぽりと入ってしまうくらいの大きさとなります。
2. 気圧が低い台風は強い台風←誤解
台風の予報では、必ず「中心気圧は〇〇hPa(ヘクトパスカル)」といいますよね。これを聞いて、「今度の台風は〇〇hPaだから強そうだ」と思う人は多いことでしょう。
しかしこれは、誤解です。
気象庁の天気予報では、台風の強さは「中心付近の最大風速」を基準としています。風速によって形容詞も違い、33m/s以上~44m/s未満のものは「強い」台風、44m/s以上~54m/s未満の台風は「非常に強い」台風、54m/s以上の台風は「猛烈な」台風と呼ばれます。
たとえば予報に「非常に強い台風10号は、沖縄付近を北上し…」というフレーズが登場したら、その台風10号は中心付近の最大風速が44m/s以上~54m/s未満というわけですね。
時速に換算すれば158.4km/h~194.4km/hとなり、高速道路を走る車よりも速く、新幹線の速度に迫る風速ということになります。これくらいの風速になると、樹木や電柱が倒れたり、ブロック塀が壊れたりする恐れがあり、屋外を歩くのは極めて危険です。
ちなみに、33m/s未満の台風は、「弱い」台風とは言われず、何も形容詞をつけないことにしています。
ただ、気圧の低さが台風の強さとは全く関係がないとは言い切れません。天気図を見ると、台風のあるところの等圧線は年輪のような同心円で表示されます。これがグルグルと重なりまくり、中心付近が真っ黒になっているようなものは要注意です。等圧線が混み合っているということは、狭い範囲で急激に気圧が下がっているということなので、こういうときは強い風が吹くのです。
台風の強さは気圧の低さとはイコールではありませんが、狭い範囲で気圧が急激に低くなるのであればそれは風が強く、勢力が強い台風だといえるのです。
3. 小さい台風は弱い台風←誤解
よく、ネット記事などで「巨大台風が日本を襲う」などといった恐怖を煽るタイトルがつけられているのを目にします。巨大な台風は怖そうですが、小さな台風は怖くないのかというと......
そうではありません。
2019年に、関東地方で立て続けに台風による大きな災害が2回も発生しました。1回目は9月に上陸した台風15号、もうひとつは10月に上陸した台風19号です。この2つの台風は、とても対照的でした。
台風15号は、風が強く、房総半島で建物が壊れたり、大規模な停電を引き起こしたりしました。その一方で、台風19号は雨がたくさん降り、東日本で河川の氾濫や土砂災害などが相次ぎました。
そして、台風15号は小さい台風だったのに比べ、台風19号は大きな台風だったことも対照的でした。そう考えると、小さい台風が怖くないというのはまったくの誤解だということがわかります。
小さい台風でも、中心付近の最大風速が大きければ災害リスクは高まります。小さいということは、接近すると急に風が強くなるということなので、油断していると大変な目に遭うかもしれません。
だからといって大きな台風だから安心というわけでもありません。大きい台風は雨や強風が長く続くため、広い範囲で災害が発生しやすいという特徴があります。
このように、台風についてはたくさんの誤解があります。正しい情報を知って、台風シーズンを安全に乗り切ってほしいと思います。